発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
幼児の発話と身振りの統合的理解に及ぼす指示語発話の効果
三宅 英典杉村 伸一郎
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2017 年 28 巻 2 号 p. 96-105

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抄録

対人コミュニケーションにおいて,私たちは話者の発話だけでなく,身振りも考慮してメッセージ理解をしている。このように,発話と身振りがそれぞれ独自に伝達する情報を組み合わせて理解をすることを統合的理解と呼ぶ。発話と身振りの統合的理解は幼児期に発達するが,幼児の日常場面において,発話には身振りを指示する指示語発話がしばしば伴うものの,先行研究では指示語発話を考慮した統合的理解の検討がなされてこなかった。そこで本研究では,指示語発話無し条件と有り条件を設定し,3歳~6歳児210名を対象に,発話と身振りの統合的理解の発達を検討した。発話2種類と身振り2種類を組み合わせて作成した4つのメッセージを順番に提示し,4つの選択肢の中からメッセージと一致するものを選択させた。身振りとして,実験1では映像的身振りを,実験2では暗喩的身振りを提示した。その結果,発話情報と身振り情報の両方が正しい統合選択肢の選択割合が,映像的身振りと暗喩的身振りの両方で,指示語発話無し条件よりも有り条件の方が高く,指示語発話が統合的理解を促進したことが明らかになった。また,統合選択肢の割合は,映像的身振りでは加齢とともに高まったが,暗喩的身振りでは各年齢間で差がみられなかった。これらの知見をもとに,幼児期における発話と身振りの統合的理解の発達過程を考察した。

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© 2017 一般社団法人 日本発達心理学会
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