2017 年 28 巻 2 号 p. 84-95
本研究の目的は,Eriksonが提唱した否定的アイデンティティの概念に基づいて,否定的アイデンティティを有する青年を抽出し,その抽出手続きが妥当かどうかを検討することであった。研究1では,否定的アイデンティティを有する青年を抽出するために,20答法の記述の分類基準を作成した。そして,大学生を対象に質問紙調査を実施し,否定的アイデンティティを有する者と有さない者で,アイデンティティ達成,罪悪感,基本的信頼感,キャリア探索,職業未決定の得点を比較した。その結果,理論的に予測された通りの得点差のパターンが示された。研究2では,研究1の調査1の対象者から抽出した大学生22名に対して半構造化面接を行い,否定的アイデンティティを有する者と有さない者で回答の内容を比較した。否定的アイデンティティを有する青年は,自己が全体的に社会的に望ましくないという感覚を持つとともに,アイデンティティの危機,罪悪感,基本的信頼感の喪失を経験していることが確認された。以上より,本研究で使用した20答法による抽出手続きによって,否定的アイデンティティを有する青年を適切に抽出できることが示された。