本研究では,児童の因果的説明に着目することで,地理学的事象に関する理解は学年とともにどのように発達するのかを検討した。公立小学校3年生25名,5年生26名に対する個別実験において,3つの産業(畜産農業,耕種農業,飲食サービス業)が,特定の地域で盛んな理由を,それぞれ絵カードを提示しながら尋ねた。さらに補足の質問として,児童が回答した内容の因果関係をつなぐ要因を尋ねることに加えて,「児童が回答した要因だけで当該事象を説明できるか」を問うことで児童が回答した要因とは別の要因への着目を促した。児童の回答内容を分析した結果,(1)学年間の変化として,3年生から5年生にかけて社会的条件に着目した説明と経済的条件に着目した説明が増加する一方で,準自然的条件に着目した説明と人道的条件に着目した説明が減少したこと,(2)産業に応じた説明の選択に関しては,3年生から自然的条件に着目した説明を畜産農業と耕種農業に利用できる一方で,社会的条件に着目した説明を飲食サービス業に対して利用したのは5年生であったこと,(3)補足の質問の有効性については,5年生かつ補足の質問の前に少なくとも一つの地理学的条件に着目した説明を行った児童において,地理学的条件に着目した説明の増加がみられたこと,以上の3点が示された。