発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著(依頼)
周産期からの発達研究の意義
明和 政子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 28 巻 4 号 p. 195-201

詳細
抄録

ヒトでは妊娠後期から生後1年にかけてシナプスが爆発的に形成され,脳の容積や厚みが増す。その後,生後の環境の影響を受けながら必要なシナプス結合は強められ,不要な結合は除去されることで,より機能的な神経回路が形成される(シナプス刈り込み)。こうした脳神経の可塑的変化は,ある一定の時期にのみみられる。早期産児は,脳の発達に顕著な変化が起こるこの時期に,胎内とは異なる環境に晒されて成長する。異質な環境が早期産児の脳神経系発達に与える影響を実証的に明らかにするため,私たちは出生予定日に達した早期産児および満期産新生児を対象とした研究を行ってきた。本稿では,現在までに得た実証データのいくつかを紹介し,周産期の脳神経系の成熟がとくに社会的認知の発達に関連する可能性について議論する。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top