発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
ADHD傾向がみられる子どもとの関わりにおいて生じる教師の困難感のプロセスとその特徴:教師の語りによる質的研究
角南 なおみ
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2018 年 29 巻 4 号 p. 228-242

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抄録

通常学級における発達障害児に関する研究は多数行われているが,ADHDを対象に教育実践の内実を教師の語りから明らかにした研究は今のところ見当たらない。そこで,本研究はADHD傾向がみられる子どもに対象を絞り,通常学級での関わりにおいて生じる教師の困難感のプロセスとその特徴を明らかにすることを目的とする。通常学級担任16名を対象に半構造化面接を行い,得られた29事例のデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した結果,8カテゴリーグループと仮説モデルを生成した。【通常の対応における困難場面】の後【個別対応】を行うがうまくいかない場合【教師の悩み】が生じ,その後,子どもの行動や認知に関する【特性理解】と良さや内面に焦点を当てた【子ども理解】による[子どもの多面的理解]が行われていた。それを契機に,状態を分析し教師自身の関わりを模索する中で子どもの認知の再構成が生じる【対応の再検討】と,その過程で【個別対応】とともに【学級での関与】がなされていた。考察では,教師の関わりについて,直接的関わりとしての【個別対応】,環境への配慮としての【学級での関与】,新たな関わりの契機としての[子どもの多面的理解]の3観点から教育的示唆を提示した。最後に,教師に生じる悩みの意義を検討した。今後の課題として,サンプリングの水準,モデルの精緻化,通常学級以外での連携構造の検討等の問題が挙げられた。

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© 2018 一般社団法人 日本発達心理学会
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