抄録
幼稚園の自由遊び時間に生じた子ども達のいざこざを観察し, いざこざの中で使用される方略が, いざこざ当事者の子ども達の関係によって異なるかどうかを検討した。子ども同士の関係は, 同じ遊び集団に所属しているのか, あるいは異なる遊び集団に所属しているのかどうかで分類した。幼稚園の年長2クラスの5歳から6歳までの42人の子ども達について, 4月から10月までの自由遊び時間にテープレコーダーとフィールドノートを使って週に2〜3回観察して, 37の事例を収集した。同じ遊び集団に属する子ども達の間では, 主に, 物を先取りしていることを主張する方略と, その物を所有することが展開されている遊びにとって必要であること, 例えばお母さん役の子どもが所有することが妥当であることを示す方略を使用した。異なる遊び集団に属する子ども達は, 貸すための条件を示す方略と借りる限度を示す方略を使用した。この結果は, 子ども達がいざこざの中で使用する方略が子ども達同士の関係の違いによって選択されていることを示した。