2019 年 30 巻 3 号 p. 142-152
じゃんけんは日常生活の中で,偶発的な結果に基づいて何らかの決定や選択を得るための一つの手段として広く用いられている。本研究は,子どもがどのような発達過程を経て,じゃんけん課題の遂行の基礎にある認知機能を獲得していくかを「三すくみ構造」の理解に関連づけて検討することを目的とした。対象者は,生後12ヵ月(1歳0ヵ月)超から84ヵ月(7歳0ヵ月)未満の幼児と児童569名であった。本研究におけるじゃんけん課題は,じゃんけんの「三すくみ構造」をもとに「手の形の理解課題」,「勝ち判断課題」,「負け判断課題」の3種類の下位課題から構成された。また,じゃんけん課題の成否と子どもの発達水準との関連を調べるために,対象者全員に『新版K式発達検査2001』が併せて実施された。本研究の結果,「手の形の理解課題」は2歳7ヵ月頃,「勝ち判断課題」は4歳9ヵ月頃,「負け判断課題」は5歳4ヵ月頃に平均的に達成されていくことが明らかとなった。また,「手の形の理解課題」,「勝ち判断課題」,「負け判断課題」の3種類のじゃんけん課題の成否および反応内容から評価したじゃんけんに関する知識や技能の獲得の段階(5段階)と『新版K式発達検査2001』の発達年齢との間で統計的に有意な相関が認められた。よって,本研究のじゃんけん課題は子どものじゃんけんの理解の段階を評価し,幼児の発達水準を査定するために有用であると考えられる。