幼児が行うふり遊びは子どもの発達に様々な恩恵をもたらすとされているが,その一つに自己調整機能がある。先行研究ではふり遊び,なかでも役割遊びの質や頻度が,役割遊びの内外での自己調整機能と関連するかについて検討がされてきた。しかし,役割遊びの中で見られる自己調整機能には,他の遊びと比較して,どのような特徴があるかについてはほとんど研究されてこなかった。そこで,本研究では,幼稚園に通う年中児と年長児計32名を対象に,役割遊びとそれ以外の遊びを観察し,その中で見られる自己調整的言動の頻度の比較を行った。比較の観点は,(a)認知的・情動的,(b)調整の段階(プランニング,モニタリング,コントロール,評価),(c)調整の対象(自己,他者,自他)の3つであった。その結果,役割遊びでは構成遊び(物を作る遊び)と機能遊び(身体を動かす遊び)に比べて,認知的なプランニングが多く見られることが明らかになった。一方,その他のカテゴリーについては,役割遊びと他の2つの遊びとの間に有意な差が見られなかった。以上の結果から,自己調整機能の観点から見た役割遊びの特徴はプランニングの豊かさにあること,また,それ以外の自己調整機能に関しては構成遊びと機能遊びでも役割遊びと同程度に働いていることが示唆された。