日本重症心身障害学会誌
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P1012 一事例に対する半固形化食(ムース食)の導入とその後の評価
中村 泰子中山 裕子
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2010 年 35 巻 2 号 p. 273

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抄録
目的 重症心身障害児者では、送り込みや嚥下など摂食機能に問題を抱えている場合が多く、安全で楽しく食事が行えるよう支援していく必要があり、個々に合わせて適切な食形態に調整することは重要である。今回、新しく半固形化剤を用いた付着性が低く、凝集性の高い食形態(以下、ムース食)を導入した。重症心身障害を有する男性に対し、口腔機能評価を行い、ムース食の適応について従来の食形態との比較も交え考察する。 方法 対象者は3p-症候群の30代男性。大島分類1、摂食機能は舌で送り込むが、食塊形成困難で、口腔内からのこぼれが多い。昼食の主食、主菜、副菜(2〜3品)をそれぞれに「こぼれ」を{ない・丸ごとこぼれる・だらだらこぼれる}、「口腔内残渣」を{ない・少ない・多い}のそれぞれ三段階で評価し、各回答数を数えた。実施日は23日間であった。結果を食材12項目・調理法10項目に分類し検討した。 結果 「こぼれ」では、{ない(62%)・丸ごとこぼれる(6%)・だらだらこぼれる(32%)}、「口腔内残渣」では、{ない(31%)・少ない(56%)・多い(13%)}であった。食材別、調理法別で{だらだらこぼれる}という結果が最も多かった項目は食材では野菜、調理法では和え物であった。 結論 従来提供していたミキサー食では、時間経過や唾液と混ざることによる食形態の変化がみられ、だらだらとこぼれることが多く、咽頭流入も疑われていた。今回の評価から、ムース食ではこぼれや口腔内残渣が少なく、食事中の形態変化を認められなかった。そのため、食塊形成が困難な対象者に適した形態であると考えられた。しかし、食材や調理法などにより半固形化する方法が違う為、安定した食形態を提供していくことが今後の課題となる。ムース食の特徴を捉え、対象者の口腔機能に合わせて提供し、導入後も評価を行い改善を図っていくことが重要である。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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