発達心理学研究
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幼児のインフォーマル算数について
丸山 良平無藤 隆
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1997 年 8 巻 2 号 p. 98-110

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抄録

インフォーマル算数は乳幼児期に生活の中で獲得される数知識で, 就学後の算数学習の重要な基礎力であるという。本論の目的はこの数知識の実態を文献により明らかにすることである。ここでは分離量に限定し, 数知識を1数, 2数, 3数関係に分類して検討した。この分類は思考の情報処理モデルに対応するものである。1数関係は集合の個数を数詞で表現するように, ある媒体の示す1つの数を他の媒体で表すことで, 筆者のいう数転換である。2数関係は2つの数に関する数の保存と多少等判断であり, 3数関係は2数から第3の数を生む演算である。検討の結果, 次のような実態が主に明らかとなった。乳児期初期から集合の弁別が行われ, 数量を表す言葉とその感覚が結びつき, 数理解の基礎が形成される。1数関係では数詞は集合の名称として獲得され, 数の媒体と媒体とを結ぶ軸となり, 数知識の発達を促す。2数関係の多少等判断では10進法の初歩的知識が4歳児期に使用される。また数の保存に関する知識は論理的に洗練されておらず, 日常生活を反映して具体的経験的である。3数関係の理解は数を示す媒体によって異なり, 事物集合, 数詞, 数字の順で困難さが高まる。初歩の演算は心内での集合イメージを操作して行われることが示唆された。本論ではインフォーマル算数の知識を3カテゴリーに分けることの有効性が示され, さらにいずれのカテゴリーにおいても数詞の役割の重要性が示された。

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© 1997 一般社団法人 日本発達心理学会
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