発達心理学研究
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幼児による因果推論の制約 : 生物に関する人為不介入の原理の理解
湯沢 正通
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1997 年 8 巻 2 号 p. 121-132

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抄録

本研究では幼児を対象に3つの実験を行い, 生物領域における因果推論の発達を検討した。実験の焦点は, 幼児がどのように人為不介入の原理を認識するようになるかであった。人為不介入の原理とは, 生物の特性の生成において人間が何ら役割を果たしていないという原則である。3歳から6歳の幼児に様々な事例に関してその特性の生成の原因を尋ねた。例えば, "ゾウの鼻はどうして長いのか"と質問した。幼児には"人間がゾウの鼻を長くした"などのいくつかの説明を提示し, その中から正しいものを選択するように求めた。その結果, 幼児は5歳までに人為不介入の原理を理解するようになるが, その認識に関して, 生物の飼育経験, 特性の機能的役割の認識, 生物の既知性は明確な促進効果を持たなかった。さらに, 人間との類似性が生物に関する推論に影響を及ぼすこともなかった。このような結果は, 人為不介入の原理が経験から学習されるという説明よりも, 人為不介入の原理, あるいはそれを作り出す他の原理が生得的にもたれているという説明に有利な証拠であると解釈された。

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© 1997 一般社団法人 日本発達心理学会
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