論文ID: 35.0060
新版K式発達検査2020の標準化資料を利用して,全般的な発達検査の結果に関する発達曲線を多項式で表すことを検討し,その結果から人間の一生涯にわたる精神発達の概観を試みた。最小二乗法により1次式から6次式までの式を算出し,決定係数(R2)を求めた。求められた式を用いて,全ての年齢区分(51区分)の測定値との一致率を算出した。その結果,決定係数に着目すると2~6次式で,一致率に着目すると3~6次式で,式のあてはまりが良かった。このことから,3次式によるあてはめが適当であると考えられた。次に,3次式を用いて人間の精神発達の概観を捉えると,3次式の極大値から,19歳6か月頃に発達のピークをむかえることが推定された。また,0歳から20歳まで直線的に一定のペースで発達するわけではなく,年齢が高くなるにつれて徐々に発達の速度が緩やかになることも推定された。特に,最初の0%から10%の得点になるまでは10か月かかるものが,90%から100%になるまでに7年が必要になり,精神発達の進度は年齢が進むとともに次第に低下していくことが示唆された。
【インパクト】
新版K式発達検査は0歳児から高齢者までの人たちに使用可能な標準化された検査である。本研究では新版K式発達検査2020の標準化のために集められた,0歳~70歳台の人たちを対象とした資料を使用した。人間の全般的な精神発達曲線を多項式で表し,精神発達の概観を試みる研究は,発達の理論やモデルに関する議論が促進されることが期待され,さまざまな人たちの健やかな発達を表すための1つの指標となり得る。