2024 年 52 巻 2 号 p. 129-135
【要旨】 歯や歯周組織に原因がなく,器質的問題が認められないにもかかわらず口腔内に痛みが生じる症状を非歯原性歯痛といい,診断や治療に難渋し,誤診や過治療を招くことが知られている.非歯原性歯痛には,1.筋・筋膜痛による歯痛,2.上顎洞性歯痛,3.心臓性歯痛,4.神経血管性歯痛,5.神経障害性疼痛による歯痛,6.持続性特発性歯痛,7.精神疾患または心理社会的要因による歯痛などが知られている.近年は,痛みを理解するうえで,痛みの発生メカニズムで捉え,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛の3種類に分類して考えるようになった.主な非歯原性歯痛もこの痛みの3分類で区別できる.また,舌痛症は口腔灼熱痛症候群と同じ病態とされる原因不明痛であるが,痛覚変調性疼痛の代表的な疾患とされている.口腔内に生じる原因不明痛を鑑別するには,これらの分類法を理解し,適切に検査,診断することが必要となる.