日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
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鎮静の安全性を高める―医療事故分析モデルを用いて―
今泉 うの
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2025 年 53 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

【要旨】 歯科,医科領域で広く施行されている鎮静の事故は増加傾向にある.日本における鎮静時の医療事故の原因を解析し,鎮静の安全性を向上させることを目的として,公益財団法人日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の 「事例検索」 を使用し,処置中の鎮静事故を対象に事例を検索した.医療事故分析に使用されるP–mSHELLモデルを用いて統計解析を行った結果,事故要因のうち患者要因が重篤な後遺障害に及ぼす影響が大きかった.また転帰と事故発生時期との間には有意な関連が認められたが,転帰と使用薬剤の種類との間に有意な関連は認められなかった.一方で事故の種類で最多の呼吸抑制の発生と多剤併用との間には有意な関連が認められた.鎮静事故防止には,周術期を通した患者のモニタリングが重要である.そして特にリスクの高い患者の場合,重篤な事故を防ぐためには,事前の患者の状態の把握と厳格な術後管理が不可欠である.

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© 2025 一般社団法人日本歯科麻酔学会
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