2025 年 53 巻 1 号 p. 34-39
【要旨】 心電図は臨床において,場所を選ばず簡便に,無侵襲に心臓の異常を想像することができる必須の循環モニターである.一方で,その解釈には,数字だけでは表現されない波形から心筋興奮の流れへとリンクする必要がある.そのため,他の生体情報モニタリングに比べ難しい.また,術前検査としての12誘導心電図と術中モニタリング心電図では,目的や環境が異なることにも注意が必要である.術前との比較を基本としながら,動的な変化を重視する術中モニタリングでは,連続して流れる波形を,人の目が相対的に評価する.さらに,安定して見やすい波形を得るために当たり前に適用される強いフィルタリング機能により,波形の歪みを生じ,誤った解釈に誘導されうる.
本稿では,心筋興奮と自動能,頻脈性不整脈の基本的機序といった心電図の基本について概要を振り返り,心電図フィルタリングを中心に,術中心電図モニタリングの意識されにくい注意点について着目する.