抄録
平成27(2015)年10月より施行された改正医療法において,医療事故調査制度が新設された。この制度では,医療法で定める医療施設(病院,診療所,助産所)の管理者は,同施設で提供した医療に起因した予期しない死亡が発生した場合は,「医療事故調査・支援センター」への報告の義務が謳われており,医療施設において医療事故死が発生する可能性を前提として,その具体的な行動が法的に義務付けられている。本制度の施行に向けた検討に政府は実に10年を費やしたが,日本医学会ならびに日本歯科医学会等に所属する学術集団,加えて日本医師会ならびに日本歯科医師会等の職能団体等の牽引によって結実したと言えよう。この間,医療界は長く暗い混迷のトンネルをさまよっていたようでもある。本解説においては,制度に関する変遷や現況,歯科特有の諸問題等および日本歯科医学会連合等の役割を中心として解説する。