2013 年 49 巻 5 号 p. 219-228
高齢社会に伴い,設置が容易な手すりの需要が増加している.本論文は,手すり把持によるトイレでの立ち上がり動作での負担の定量的評価法の確立を目的とする.実験では評価項目として,立ち上がり動作において手すりに作用する力学的負荷(引張力,モーメント,握力),床反力作用点の挙動,官能評価(順位法)を用いて分析を行った.その結果,踵が便座より遠位になるにつれていずれの評価項目でも増加傾向が見られた.Tukey-Kramer検定より,手前方向引張力の最大値,鉛直軸回転モーメントなどで有意差が見られ,立ち上がり難さの指標となることがわかった.またSteel-Dwass法より,官能評価でも有意差が見られた.一方,握力では,いずれの場合も有意差は見られなかった.以上の結果より,立ち上がり難さの定量的評価方法として,手すり手前方向引張力の最大値および力積を用いた評価手法が優れていると示唆された.