本研究では,ドローン操縦時の身体性について調査した.ドローンを様々な狭い隙間に通過させる実験を行ったところ,隙間幅/機体幅比が1.3倍よりも小さくなると通過時間が伸び,また安心に関する印象が減じることを見出した.これはヒトが隙間を通過する歩行特性と類似性があり,ドローンへの身体性構築状態を示していると考えられた.また,錯視を用いた機体の実験結果から,ドローン形状の見え方は周囲環境の空間認識に影響を及ぼし操縦成績を向上させる可能性があることが分かった.
日本人間工学会論文賞 2025年度受賞論文
点字図書や点字教科書などの点字出版物で用いられる図やグラフには,凸点・凸線に加え,罫線等に凹点・凹線が用いられている.点字出版物で用いられる凸点や凸線といった凸刺激は様々な研究が行われ,JISなどの規格も存在する.しかし,凹点や凹線といった凹刺激の識別容易性に関する学術的な知見は少なく,識別し易い凹刺激に関する定量的な指針が求められている.その中でも,グラフに用いる凹線による罫線は,凹線を補助として使用する際に触察しやすい凹線と凸線の距離で設計され,製作する必要がある.そこで本研究では,点字出版物で多く用いられる凹刺激からなる罫線に着目し,凹線と凸線の間の距離が触読性に及ぼす影響を評価することにした.その結果,凹線と凸線の間の距離は,2 mmや3 mmのような狭い条件が識別しやすいことがわかった.一方,5 mmや6 mmといった広い条件では触察自体が困難であることがわかった.これらの知見は点字出版物の校正を行う際の一助となると考えられる.
日本人間工学会研究奨励賞 2025年度受賞論文
本研究は,パワーアシスト装置の使用時に操作者の感じる違和感に着目し,操作者の持ち上げ操作に関する印象について議論を行った.具体的には,パワーアシスト装置を模擬した実験装置を使用し,持ち上げ物体へのアシスト力の発生した持ち上げ操作に対しSD法を用いた印象評価実験を行った.回答を主成分分析により解析をしたところ,印象の特徴は第1に安心感,第2に操作感,第3に受動感であることを導いた.違和感に着目し,印象評価項目間の偏相関係数を求めグラフィカルモデリングによる確率モデルを表したところ,アシスト量の大きいときに違和感と感情的性質の強い印象評価項目との相関が高まることがわかった.本研究から得られた知見は,パワーアシスト装置を想定した物体持ち上げ操作を対象に,人間機械協調の観点における人間側の考慮をより進めるべく,印象面での要求事項に示唆を与える.
石油精製プラント等の大規模生産・製造現場では軽労化や省人化が望まれている.しかし,設備のロボット化等の自動化も改修コストが大規模となり即時には現実的ではない.そのため人手での作業が今後も一部継続されていく可能性が高い.また,このような作業現場は,従来は成人男性の作業者が殆どであったが,近年は労働人口の低下や全員参加社会の推進で高齢者や女性作業者等の多様性が増加している場合がある.従来,成人男性に対して設計運用されてきた設備は,このような多様な作業者に対して身体的な負担となっている可能性もある.本報告では石油精製プラントのバルブ開閉操作に着目して,その作業負担を実態調査した.
日本人間工学会実践論文賞 2025年度受賞論文
島国の日本では,趣味や職業として多くの人がダイビングを行っている.しかし,ダイビングは水中圧力下での活動となるため,ダイバーには常に危険が伴い,死亡事故も発生する.このような事故を避けるために,海中でのダイバーの健康や行動を監視することが望まれている.本稿では,ヒトの健康や行動をECGやEMGにより総合的に監視できる可能性がある生体電位計測に注目し,水中での3つの生体電位計測(①海水と淡水両用の生体電極全てを防水テープ等で完全に隔離する方式,②淡水用の全ての生体電極を隔離しない方式,③海水用の一部の生体電極を隔離しない方式)の原理と特徴を解説する.これらのうち,ダイビングの大半が実施される海水中での生体電位測定においては,③の電極半隔離方式が海水の導電性を利用して生体電極数を約半分にできるので最も適している.そこで,実海域でのダイビングにおける本方式を用いた生体電位計測の現状を紹介する.
特集③人間工学のための計測手法 第3部:心理計測と解析(6)
公開日: 2016/09/28 | 51 巻 6 号 p. 391-398
三宅 晋司
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生姜抽出物の経口摂取が冷え性の人のエネルギー消費等に及ぼす効果
公開日: 2010/11/19 | 45 巻 4 号 p. 236-241
夏野 豊樹, 平柳 要
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セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題
公開日: 2010/12/03 | 45 巻 5 号 p. 263-269
市原 茂
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反応時間研究の歴史と現状
公開日: 2010/03/11 | 21 巻 2 号 p. 57-64
大山 正
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特集③人間工学のための計測手法
公開日: 2016/11/05 | 52 巻 1 号 p. 6-12
中川 千鶴
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日本人間工学会大会講演集
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