眠気やリラックス感を誘導するための揺れるチェア(スウィングチェア)の開発において人間工学の面から取り組んだことを報告する.機能検討・改善のプロセスにおいては,揺れの効果を高めるためのチェアの姿勢,揺れの振幅などを検討した.効果検証のプロセスにおいては,個々にとって望ましいチェアの姿勢や速度に調整することによって,眠気やリラックス感を誘導できることが示唆された.最終的に開発されたスウィングチェアは製品化・販売され,購入者に調査を行った結果,製品の満足度も高いことが確認された.これらの実践から,人間の心身の状態に働きかける製品の開発における人間工学の役割・課題について議論する.
日本人間工学会実践論文賞 2024年度受賞論文
近年,日本の都市部では自転車の利用が増加している.この際,子ども乗せ自転車での転倒等での子どもの損傷リスクが懸念される.本研究では,日本の都市事情を踏まえ,子ども乗せに自転車に搭乗する子どもの安全性を高めるため,子どもの乗車位置が低い子ども乗せ自転車の実現可能性と,その効果について実験的に検証した.子ども搭乗時を模擬した実物大自転車の横転実験により,一般的子ども乗せ自転車よりも提案した低座席子ども乗せ自転車のほうが頭部傷害基準値を半減できるなど安全性向上の可能性を見出した.
本研究は靴紐の締め方の強弱(tightness)が歩行動作に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験参加者は男性9名(22.8±1.2歳),女性9名(21.9±1.8歳)とし,歩行課題(自然歩行,努力歩行)と靴紐の締め方の強弱(fit条件,loose条件)を操作した歩行実験を行った.Kinect v2を用いた歩行姿勢測定システムで歩行速度,歩幅,歩隔を,体幹2点歩行動揺計で歩行周期時間,胸椎背部(以下,Th6)および仙骨付近(以下,S2)における3方向(左右,上下,前後)の平均動揺量とHarmonic Ratio(以下,HR)を計測,算出した.すべての分析項目を用いて対応のある二元配置多変量分散分析を実施した結果,歩行課題と靴紐条件について主効果が認められた.loose条件ではfit条件よりも,歩行速度,S2の上下動揺量,Th6の上下方向のHRは有意に小さく,Th6の左右動揺量,S2の前後動揺量は有意に大きかった.本研究より,靴紐の締め方が緩い(loose条件)と歩行中の体幹の動きに影響を与えることが示された.
日本人間工学会研究奨励賞 2024年度受賞論文
新しい生活様式に対応した働き方として「ワーク」と「バケーション」を合わせた「ワーケーション(Workcation)」が注目されている.旅先など普段とは異なる環境で働きながら余暇活動を行う,仕事と余暇を両立させる新しい働き方である.しかし,その効果に関する科学的エビデンスは乏しい.本研究では,首都圏の就労者を対象に,運動・スポーツによる余暇活動を取り入れたスポーツワーケーションの実証実験を行い,スポーツワーケーションが精神的健康アウトカム,健康行動アウトカム,心理社会的アウトカムに与える影響を検討した.ワーケーション参加群9人,非参加群35人の経時変化を比較した結果,健康行動アウトカム,心理社会的アウトカムの一部の項目で,参加群のスコアが非参加群と比べ有意に改善し,スポーツワーケーションが就労者の健康と生産性に寄与する可能性が示唆された.
日本人間工学会論文賞 2023年度受賞論文
本研究の目的は,ワシリー・カンデンスキーの「点・線・面」の概念を参照し,グラフィックデザイン初心者が意図した印象を表現するための適切なパラメーターを検討することである.まず,カンデンスキーを含む複数の先行研究から印象表現パラメーターを調査・整理した.調査により選定されたパラメーターを用いて,ラッセルの円環モデルに対応する線によるイメージ図と構成要素を加えたイメージ図をそれぞれ12個作成した.線によるイメージ図と構成要素を加えたイメージ図において,意図した印象表現のパラメーターの効果的な感情誘起について調べた.結果として,線によるイメージ図の検討における必要なポイントが得られ,構成要素を加えたイメージ図においては,ラッセルの円環モデルに基づく意図した結果を得ることができた.
日本人間工学会研究奨励賞 2023年度受賞論文
反応時間研究の歴史と現状
公開日: 2010/03/11 | 21 巻 2 号 p. 57-64
大山 正
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セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題
公開日: 2010/12/03 | 45 巻 5 号 p. 263-269
市原 茂
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特集③人間工学のための計測手法
公開日: 2016/11/05 | 52 巻 1 号 p. 6-12
中川 千鶴
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特集③人間工学のための計測手法 第3部:心理計測と解析(6)
公開日: 2016/09/28 | 51 巻 6 号 p. 391-398
三宅 晋司
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双腕での力知覚・再現タスクにおける両側性転移
公開日: 2012/07/11 | 48 巻 1 号 p. 35-39
朴 根永, 斉川 秀司, 金 泳佑, 長井 力, 大日方 五郎
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日本人間工学会大会講演集
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