日本人間工学会(JES)は1964年に設立され,人間工学の研究と実践を推進している.今年で設立60周年を迎えるにあたり,過去25年間の会員数の推移と現状を報告するとともに,今後を見据え次にJESが進むべき方向性について議論する.会員数はピーク時の半数にまで減少しており,これはJESだけでなく多くの学会が直面している共通の課題である.今後,人間工学の分野をさらに発展させるためには,若手研究者にとって身近で魅力的な学会であると認識されることが重要である.そのため,オンラインイベントの開催ノウハウの体系化と学会員の利便性と交流の質を両立させるための対応を行っていくことが急務である.JESは社会に貢献する学会として人間工学の未来に向けた重要な役割を担っており,引き続き革新と成長を続ける学会を皆で共に創り上げていくことが求められる.
靴が原因となる足部疾患や痛みなどの足部のトラブルに悩まされている人は少なくない.靴製造に携わるメーカー等ではトラブル解消のために素材の開発や形状の考案など様々な研究開発が行われているが課題解決は容易ではない.本稿では,これらの足部のトラブルの原因は静的な足部形状をもとにした靴づくりにあると提起する.靴づくりの動向,靴づくりの課題,足部動態計測の試みを整理したうえで,人間工学研究の方向性と果たすべき役割についてまとめた.
環境人間工学の分野は人間工学では環境との関連において,安全・安心,快適な環境を創造する実践科学として,重要である.他学会の動向も踏まえながら,温熱環境を例にとって人間工学の強みを活かした研究の方向性についてまとめた.