人間工学
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最新号
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エディトリアル
オープンデータ
  • 鞠 潤亨, 山下 利之, 岡崎 章
    2023 年 59 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

    患児のための“プレパレーション”は,“インフォームドコンセント”に対応したものであり,看護師や医師が患児の不安のようなネガティブ感情,痛みのような感覚を把握して,適切に対処する必要がある.しかし,患児は自分の感情を言葉で正確に伝えることが困難であることが多いために,小児看護ではしばしば患児の行動や言動の観察に頼ることが多い.そこで,筆者らは,“プレパレーションツール”の一つとして,身体オブジェクトを用いたデジタル感情表現ツールを開発した.身体オブジェクトは,人間の身体(頭部,胴体部,大腿部,下腿部,足)と同様の比率を持つ5つのパネルで構成される.患児はパネル間の角度を調整して身体オブジェクトの姿勢を変えることによって,感情を表現することができる.本ツールがネガティブ感情をいかに表現するかに関する基礎データを得るために,17名の大人の実験参加者による実験を実施した.その結果,ネガティブ感情にあるときと同様の姿勢に身体オブジェクトの姿勢を変形させることが確認され,本ツールの小児看護におけるプレパレーションツールとしての可能性が示唆された.

原著論文
  • 松原 諒之, 梅室 博行
    2023 年 59 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,オンライン講義において,学生の感情が可視化され教師に共有された時に,教師のパフォーマンスと教師の自己効力感が受ける影響を明らかにすることを目的とした.本研究では,被験者が互いの顔が見えないオンライン模擬講義上で実験をおこなった.模擬講義中に教師に学生の感情が可視化される可視化有り条件と,可視化されない可視化無し条件の2つの条件を設けた.模擬講義後に学生役には教師のパフォーマンスについて,教師役には教師の自己効力感について,それぞれ評価してもらった.実験で得られた結果から可視化有り条件の方が可視化無し条件よりも教師の自己効力感が高い有意傾向がみられた.特に,教師の自己効力感の下位尺度である指導戦略への効力感は,可視化有り条件の方が可視化無し条件よりも有意に高かった.また可視化の有無と教授内容との有意な交互作用も見出され, 教師が教えることに困難を感じる内容ほど学生の感情の可視化が有効であることが示唆された.本研究の結果は,オンライン講義における教師の自己効力感の向上に貢献するだけでなく,オンライン講義システムの設計開発に示唆を与えることが期待できる.

短報
  • 寺田 智哉, 渋谷 雄, 梶村 昇吾
    2023 年 59 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,対戦型カードゲームにおいてカードを引かれる側のプレイヤーの視線の動きを適度な粒度でカードを引く側のプレイヤーに提示することにより,プレイヤー間のゲームスキル差を埋めるなど,対戦をより楽しむことができる仕組みを構築することである.その前段階として,カードを引かれる側のプレイヤーが特定のカード(ジョーカー)を持っている際に採る戦術を客観的データである視線分析結果に基づいて分類し,そのプレイヤーが意図した戦術との一致度を実験により調査した.また,カードを引く側のプレイヤーが相手プレイヤーの視線の動きを主とした外的表出から推定したジョーカーが正解かどうかを測定した.実験の結果「ババ抜き」を模した実験において,カードを引かれる側のプレイヤーはジョーカー以外のカードを最も注目する戦術,または,ジョーカーに最も注目する戦術を取りやすいことが分かった.また,ジョーカーに最も注目する戦術では,カードを引く側のプレイヤーがその意図や戦術を読み取ることができた.これらの結果や実験協力者への質問結果から,より多くのプレイヤーにとって楽しいと感じられるゲーム体験の実現方法についても検討した.

技術報告
  • 能登 裕子, 藤田 香奈恵, 橋口 暢子, 戸上 英憲, 佐藤 幸志郎, 野呂 影勇
    2023 年 59 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2023/04/15
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

    臥床での生活や治療時の快適性の向上,褥瘡発生リスクの低減において,体表面が支持面から受ける圧力の管理や管理方法が重要となる.本研究では,マルチチャンネルA/D変換器と圧力センサーで構成した計測システムを用いて,ベッド上での体位変換中に被介助者が受ける接触圧力の推移と体位変換技術の快適性を評価するとともに,計測システムの有効性を検証することを目的とする.介助者として熟練看護師13名,被介助者として健康な成人女性1名を対象に,仰臥位から右側臥位への体位変換(4条件)において,被介助者とベッド間の接触圧力の推移を計測し可視化した.被介助者の膝を立てた姿勢に比べ,膝を伸ばした姿勢からの体位変換は,腰部への圧力負荷が高く主観的負担が増加した.各条件の計測結果から,体位変換前の姿勢と回転方法により被介助者が受ける接触圧力の影響が異なること,計測システムにより体位変換動作の違いを接触圧力の推移から識別できることが示唆された.

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