点字図書や点字教科書などの点字出版物で用いられる図やグラフには,凸点・凸線に加え,罫線等に凹点・凹線が用いられている.点字出版物で用いられる凸点や凸線といった凸刺激は様々な研究が行われ,JISなどの規格も存在する.しかし,凹点や凹線といった凹刺激の識別容易性に関する学術的な知見は少なく,識別し易い凹刺激に関する定量的な指針が求められている.その中でも,グラフに用いる凹線による罫線は,凹線を補助として使用する際に触察しやすい凹線と凸線の距離で設計され,製作する必要がある.そこで本研究では,点字出版物で多く用いられる凹刺激からなる罫線に着目し,凹線と凸線の間の距離が触読性に及ぼす影響を評価することにした.その結果,凹線と凸線の間の距離は,2 mmや3 mmのような狭い条件が識別しやすいことがわかった.一方,5 mmや6 mmといった広い条件では触察自体が困難であることがわかった.これらの知見は点字出版物の校正を行う際の一助となると考えられる.