抄録
1916年, L. Hill により人体の放熱模型としてつくられたカタ寒暖計は, 現在では屋内で観測されるような微風速を測る優秀な計器に転用されている. 本論文では, まずカタの風速算出式の検討とその熱伝達率についての検定実験を試みた. その結果, 気温とふく射温が異なる一般の熱環境で原式をそのまま用いれば, 得られた風速値には誤差が含まれること, および特に対流熱伝達率が過大に見積もられていることなどが判った. つぎに新しく乾カタと湿カタの熱平衡式をたてて, いわゆるふく射環境においても矛盾なく風速が求められる公式を導き, 事務室での環境測定を実施して在来法と本法との比較を行った.