抄録
合成された日本語の5母音からなる無意味語の, 雑音下における検出能力および判別能力について調べた. これら能力の指標として, 無意味語の検出および判別を可能とするSN比を各々用いた. まず, 19~23歳の若年群および50~65歳の高齢群について, これらSN比を測定した. その結果, 判別能力に関して高齢群は若年群よりも平均+9dB程度のSN比を要したが, 検出能力に関しては同程度であった. 次に, 純音聴力および周波数選択能力の低下を模した条件を与えた若年群について, これらSN比を測定した. その結果より, 周波数選択能力の低下が, 高齢群にみられた判別能力の低下に関与していることが示唆された. 本稿では, 以上2つの実験結果より推察される加齢に伴う聴覚系の機能劣化についても述べる.