人間工学
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VE酔い評価手法の開発に向けての基礎的検討
中川 千鶴大須賀 美恵子竹田 仰
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2000 年 36 巻 3 号 p. 131-138

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抄録

近年, 仮想環境 (Virtual Environment: VE) の技術は著しく進歩しており, 多くの分野で普及しつつあるが, 一方で, VEシステムの利用時・利用後に生じる「酔い」の問題が顕在化し, その低減や防止策が強く望まれている. そこで, 我々は, VEシステム利用時の嘔吐に至らない程度の軽度の「酔い」を簡便かつ客観的に評価する手法を検討した. 13名の健常成人を被験者に用い, 黒い3次元空間に白いドットがランダムに分布している仮想空間内を移動する映像を刺激として用い, 暗室内の70inchの画面に提示して最大15分暴露した. この間の心電図, 呼吸などの生理反応を収集し, これらから得られる指標値と「酔い」の程度の主観評価との関係性を調べた. その結果, 軽度の酔いが発症した場合に, 呼吸周波数と心拍変動の0.1Hz近辺の成分が低下するという特徴的な現象がみられた. これらは, 他のストレス事態における生理反応パターンと異なるものであり, VEによる軽度の「酔い」の評価指標として用いられる可能性が示された.

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© 一般社団法人 日本人間工学会
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