人間工学
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衣服と運動量
笠井 美恵子
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1968 年 4 巻 2 号 p. 161-166

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抄録
衣服とは, 静姿の人体によく合っていて, しかも日常生活における運動機能を十分に果すことのできる立体的構造をもった着心地のよい“きるもの”をさす. 広くいって“肌着からドレスまで”ふくまれることになる.
そういう衣服のために運動量 (ゆとり) を合理的にするため“上腕の動き”に例をとり, 胴の構造体を組立てた実験研究の報告である.
(1) 上腕の動きを日常生活にしぼって, 斜前方向で, 高さが低位・水平位・高位の3種類とした.
(2) 静姿の人体に直接, 水平・垂直の線を引き, 上腕の動きにともなっておこる人体表面 (皮膚面) の伸縮の変化を視覚的に捕えた.
(3) 人体の線を紙に写しとったものを Shell (殻) という. 静姿・低位・水平位・高位の Shell をそれぞれ一平面上にひろげてみた.
静姿の Shell は衣服の造型性を生み出し, 運動の Shell は運動量を算出するのに役立った.
(4) 更に, 断面構造に焦点を当てて, 運動量 (%) を貯える位置を明確にした.
(5) 運動量をふくめた, 衣服のための構造体 (胴) を(3)と(4)から造り上げた.
この実験の結果, 胴の構造体の運動量は腕孔を中心として前後面の奥行にとり, 側面脇下には不必要なこと, 特に背巾の運動量は3動作のうち, 最も目立たない低位にその基準をおくべきことなど重要な結論を得た.
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© 一般社団法人 日本人間工学会
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