2016 年 23 巻 1 号 p. 57-62
本研究は,異なる強度のパルス電磁場(Pulsed electromagnetic field, PEMF)刺激による血液循環動態への影響を,超音波検査にて測定した血流速度を指標として検討することを目的として行った.対象は感覚異常がなく,超音波・電磁場の禁忌事項に該当しない健常な男性10名とした.同一被験者において右上腕動脈上の肘関節掌側に強度の異なるPEMFを60分間照射し,左上肢はコントロールとして安静位にした.超音波検査のパルスドップラーモードを用いて介入0,15,30,45,60分後の計5回の血流速度と皮膚温度を測定し比較した.その結果,群間比較,群内比較ともに強度に関わらずPEMF照射45分後,60分後の血流速度において有意な減少が認められた.本研究の結果から,今回用いた刺激強度での長時間のPEMF照射は,血流速度を減少させることが示された.流体の連続の法則より,本研究において血流速度が減少した背景としては,血管拡張が生じた可能性があるものと推察された.しかし,PEMFの血液循環動態に対する生理学的効果のメカニズムに関しては,まだ十分に解明されておらず,不明な点が多いことから,今後のさらなる研究の展開が必要であると考えられた.