2016 年 23 巻 1 号 p. 67-71
[目的]本研究の目的は,膝前十字靭帯(ACL)再建術後疼痛に対する鍼様経皮的神経電気刺激(Acupuncture-like Transcutaneous electrical nerve stimulation:鍼様TENS)の効果について,時系列デザインにより電流知覚閾値(Current perception threshold:CPT)を指標にして評価すること.[対象]膝ACL再建術を施行され同意を得られた10名(男性4名,女性6名,平均年齢27.0±14.2歳).[方法]時系列反転(ABABA)デザインに基づいて,術後4日目から術後8日目まで5日間に,2回の鍼様TENS介入を行い, CPTと疼痛の程度をVisual analogue scale (以下VAS)によって測定した. 鍼様TENS条件は,周波数5 Hz,パルス幅250 ms,最大運動刺激の約50%強度,治療時間15分間で実施した.解析は,術後日数を独立変数,CPTとVASを従属変数とし,鍼様TENS介入前後で,t検定により変化量を比較した.また,時系列グラフによる傾斜線の方向変化(陽性または陰性)ついて言及した.[結果]鍼様TENS介入前後で各CPTとVASの有意な差は見られなかった.傾斜線の方向変化はCPT(2,000 Hz)とCPT(5 Hz)が,介入後に陽性を示し,対照的に疼痛VASは陰性を示した.[結語]ACL再建術後疼痛に対して,鍼様TENS介入が感覚神経Ab線維とC線維の閾値上昇に影響を与え,疼痛の伝達に対して抑制的に働くことが推察された.