物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
特別講演
電気刺激療法の適応と可能性
伊橋 光二
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 24 巻 1 号 p. 01-07

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抄録

電気刺激療法は物理療法の中でも長い歴史を持つ治療手段の一つである.現在,運動麻痺に対する電気刺激療法の適応は,脳卒中片麻痺に代表される中枢性運動麻痺が中心となっている.中枢性運動麻痺の場合,運動単位に障害はなく(合併症がなければ),筋は電気刺激に容易に反応し,結果として様々な治療効果を生じる.特に機能的電気刺激(functional electrical stimulation: FES)については中枢性下垂足に対する簡便な装置が利用できるようになり,装具としての効果「orthotic effects」だけでなく,機能改善効果「therapeutic effects」が認められている.このtherapeutic effectsは脳卒中片麻痺だけでなく脳性麻痺においても特に片麻痺タイプで認められている.また,脳卒中片麻痺には筋電誘発型電気刺激装置も適応されている.この一つである本邦で開発された随意運動介助型電気刺激は、FESとして用いることで機能改善効果が報告され,脳の可塑性を賦活していることが示唆されている. 人工膝関節置換術後は大腿四頭筋の筋力低下が問題となることが多い.この筋力低下には筋力発揮の抑制,すなわち神経因子が影響しており,Central Activation Ratioの低下が指摘されている.これに対して術後早期から神経筋電気刺激療法(Neuromuscular electrical stimulation: NMES)が適応され効果が示されている. NMESは筋骨格系障害だけでなく,近年,重症疾患の筋力低下にも適応されるようになった.敗血症に代表される重症疾患患者に急性の重篤な四肢筋力低下が発生することが知られており,Intensive Care Unit-Acquired Weaknessと呼ばれている.これに対するNMESは,現在のところエビデンスの不足により効果が明確となっていないが,鎮静下での人工呼吸管理が必要な患者では能動的な運動療法は制限されるため,NMESは筋収縮を起こすことのできる簡便な方法として重要と考えられ,今後の研究に期待したい.重度の呼吸不全や心不全で運動療法の適応が困難な患者へのNMESの適応が広がっており,Cochrane Database of Systematic Reviewsで効果が認められている.この領域のNMESの普及と研究の進展に理学療法士の積極的な関与が重要と考えられる.

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© 2017 一般社団法人 日本物理療法学会
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