2020 年 27 巻 1 号 p. 01-06
疼痛,関節可動域障害,筋力低下といった運動器の機能障害はリハビリテーション医療の主たる対象であり,臨床ではこれら運動器の機能障害の治療に難渋している.また,超高齢社会を迎えたわが国においては高齢者の健康寿命にも多大な影響をおよぼしていることから,その対策は喫緊の課題といえる.本稿はこれら運動器の機能障害の中でも疼痛ならびに関節可動域障害の主原因である拘縮に焦点をあて,病態と発生メカニズムに関する基礎研究の知見を紹介し,基礎研究から得られたエビデンスに基づいた治療戦略のあり方について概説した.また,身体局所あるいは全身の不活動によって惹起される疼痛,拘縮,筋萎縮の発生メカニズムには,共通かつ重要な事象が関与していることが最近明らかとなり,“運動器不活動症候群”と総称する新たな症候概念も見出されている.そこで,本稿では運動器不活動症候群の発生メカニズムについても紹介した.