2025 年 32 巻 p. 14-17
近年,脳情報を解読して外部機器を制御するブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Machine Interface; BMI)技術が注目を集めている.BMIは,脳活動をリアルタイムに解析し,ロボットや外部装置の制御に活用する技術である.特にリハビリテーション分野では,脳卒中後の運動機能障害に対する有効性が多くの研究で報告されており,国内外でエビデンスが着実に蓄積されてきている.BMIを臨床現場で利用可能な医療機器として実用化するためには,臨床ニーズの把握,設計・試作,非臨床試験,薬事承認に至る複雑なプロセスが必要である.こうしたプロセスを経て,2024年には日本国内でBMIを応用した医療機器が医療機器認証および保険適用を取得し,臨床現場への導入が開始された.現在,全国規模でBMIの有効性や最適な使用法を検証する臨床研究が活発に展開されており,科学的なエビデンスの深化とともに,臨床応用の実践的な工夫も進められている.今後は,対象疾患の拡大や,自宅を含むさまざまな環境で利用できる簡便なBMI機器の開発などを通じ,BMI技術の社会実装と患者のQOL向上にさらなる進展が期待される.