論文ID: 2024-011
我々は,永久磁石を回転させ磁束密度を変化させて誘導電流を発生させる小型の末梢磁気刺激「Spinning permanent magnet:SPM」を開発した.SPM装置の刺激強度は感覚閾値未満である.パルス変動磁場による運動閾値以上の末梢磁気刺激は上行性入力を介して皮質脊髄路興奮性変調効果が報告されている.しかし,SPM装置が発する末梢磁気刺激が皮質脊髄路興奮性を変調させるかは不明である.本研究は,SPM装置で右前腕橈側手根伸筋を刺激し,支配領域の皮質脊髄路興奮性変調効果を検証した.方法は健常成人10名を対象に,SPM装置を用いた実刺激と装置を模した偽刺激の二条件を行い,皮質脊髄路興奮性の指標となる運動誘発電位(Motor evoked potential : MEP)を測定した.MEPの測定時期は,刺激介入前,直後,10分後,20分後とし,MEPの変化を検証した.結果,各測定時期および両刺激条件間でMEPの変化は認めなかった.SPMによる磁気刺激によって,皮質脊髄路の変調を認めなかった原因は,SPM刺激は従来の磁気刺激と比べて刺激強度が低いことや,刺激範囲が局所的であることが考えられる.しかし,本研究のサンプルサイズでは,皮質脊髄路興奮性を変調させる可能性について明確な結論を導くことは難しく,さらなる検証が必要である.