2021 年 11 巻 1 号 p. 23-28
本研究では,小学校において全校合唱への参加を拒む対象児に対し,継時近接法を適用し,行動の変容について検討することを目的とした。継時近接法の導入においては,教師に促されずに一人でステージまで移動し,正しい位置に立って大きな声で歌うことを最終目標行動とし,13段階の下位目標行動を設定して実施した。結果として,対象児は各下位目標を順次達成することで徐々に自信をもつようになり,対象児にとって不安の高い全校合唱場面に適応することができた。このことから,本研究で用いた介入は,目標行動を達成する上で適した手立てであったといえる。また,本研究の継時近接法が適切であった理由として,①対象児の実態に合わせて行われたこと,②支援者である教師が温かい眼差しで対象児にかかわったことが挙げられた。本研究によって,学校教育現場において学校行事に参加できない他の児童に対しても継時近接法が十分に機能する可能性が示唆された。