抄録
本研究は,ソーシャルスキルと進路意識との関連について,かかわりのスキルと進路意識との関連は,
配慮のスキルによって調整され,なおかつ,配慮のスキルとかかわりのスキルの両方が高くなければ,約
半年後の進路意識の高さを予測しないだろう,という仮説を検討することを目的としていた。調査対象者
は,高校生257名(男子134名,女子123名)であった。分析の結果,Time 1からTime 2において進路意識に
有意な得点の変化は認められなかった。そして,階層的重回帰分析の結果,Time 1の配慮のスキルとかか
わりのスキルの交互作用項のみ,Time 2の進路意識に対して有意な正の関連が認められた。これらの結果
から,まず,本研究ではTime 1からTime 2にかけて進路意識の有意な変化は認められなかったが,この結
果についてはさらなる研究知見の蓄積が望まれることが示唆された。次に,配慮のスキルはかかわりのス
キルの調整要因であり,なおかつ,両方のソーシャルスキルが高い場合のみ,その後の進路意識の高さを
予測することが示された。以上のことを踏まえ,高等学校での進路指導におけるソーシャルスキルの育成
に関する留意点が議論された。