体外循環技術
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原著
先天性心疾患における人工心肺中の血漿遊離ヘモグロビン管理と腎保護効果
―Hemocue®の測定値を指標としたハプトグロビン製剤の投与戦略―
後藤 健宏谷 誠二山崎 将志白前 達大松月 正樹西川 祐策佐生 喬鳥羽 修平夫津木 綾乃阪本 瞬介小沼 武司岩田 英城新保 秀人
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2017 年 44 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

人工心肺の合併症には人工心肺関連急性腎障害(acute kidney injury-cardiopulmonary bypass:AKI-CPB)があり、要因の一つに血漿遊離ヘモグロビン(plasma free-hemoglobin:PF-Hb)の腎毒性があげられる。当院では2014年1月より人工心肺中のPF-Hbを経時的に測定し、その値を指標にハプトグロビン(haptoglobin:Hp)製剤を投与する方法を導入した。2012年1月から2015年12月までに当院にて施行した体重20kg以下の先天性心疾患症例のうち人工心肺を使用した129例を対象とした。血液濃縮器の廃液の赤色化や溶血尿が発生した時に25mLずつHp製剤を投与した57例(A群)と、PF-Hbの値が0.03~0.05g/dLで25mL、0.05g/dL以上で50mLのHp製剤を投与した72例(B群)で比較検討を行った。検討はHp製剤投与量、術後の溶血尿発生数、Acute Kidney Injury Network(AKIN)でのStage分類、術後の急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の発症数、肝機能評価に対して行った。

B群はHp製剤の投与量がA群に比し増加したが、一方で溶血尿発生数、AKINのStage分類、AKIの発症数が有意に減少した。また、Hp製剤の投与で懸念される肝障害の発生数に有意差はみられなかった。

今回、CPB中に測定されたPF-Hbを指標にHp製剤を投与する方法を導入した。その結果、従来の方法よりHp製剤の投与量は増加したが、肝障害を与えることなく腎機能の保護が可能となった。

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© 2017 一般社団法人 日本体外循環技術医学会
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