2018 年 45 巻 4 号 p. 375-379
保険償還されている植込型補助人工心臓(implantable ventricular assist device:iVAD)を2011/4~2016/12に装着した重症心不全患者109名を対象とし、機器の取り扱い上のミスを引き起こす要因について検討を行った。対象としたミスは、不注意もしくは誤った取り扱いによってポンプが停止した事例およびドライブラインを損傷させた事例とした。統計学的な検討ではFisherの正確検定を用い、p<0.05で有意差ありとした。
総発生件数は34件であった。デバイス別の発生件数(発生率)はEVAHEART ®、DuraHeart ®、HeartMate II ®、Jarvik2000 ®の順にそれぞれ0、5、8、21件(0、0.16、0.11、0.63件/患者・年)であった。このうち、患者自身が起こしたミスは28件(22名)で、21件(75.0%)は装着から1年未満のうちに発生していた。ミスを起こしやすい患者を判別することが可能かについて検討したところ、複数回にわたりテストを受け、かつ1回でもTrail making test-Bの結果がカットオフ値以上であった患者との間に関連性は認められたが(p=0.04)、その感度は13.6%であった。以上より、ミスを起こしやすい1年未満の時期に注視すべき人を見定めることは困難であり、ミスを減らすためにはフールプルーフ、フォールトトレラントを採用した機器の設計が必要である。