体外循環技術
Online ISSN : 1884-5452
Print ISSN : 0912-2664
ISSN-L : 0912-2664
原著
人工心肺管理における酸素供給量と静脈血酸素飽和度を用いた適正灌流の指標の検討
―2施設共同観察研究―
向田 宏松下 訓長嶋 耕平田端 実天野 篤
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 47 巻 1 号 p. 28-34

詳細
抄録

 混合静脈血酸素飽和度(SvO2)による人工心肺管理は局所の酸素需給バランスの不均衡が反映されにくいことから適正灌流の指標として限界が指摘されている。今回、このSvO2の限界を酸素供給量(DO2)のモニタリングにより補えるかどうか術後急性腎障害(acute kidney injury:AKI)発症とSvO2およびDO2との関連を調査し、検討した。

 体外循環中のSvO2とDO2iのカットオフ値から曲線下面積(AUC <SvO2 75、AUC <DO2 i300)、およびカットオフ値を下回った累積時間(Time <SvO2 75、Time <DO2 i300)を算出し比較検討を行った。

 SvO2は両群で有意差を認めなかったが、AUC <DO2 i300とTime <DO2 i300に有意差を認めた。

 両群でSvO2値は安全域とされる75%以上に概ね維持されていた。しかし、DO2 iはAKI群で有意に低く、SvO2を75%以上に維持するだけではAKIの予防とはならないことが示唆された。適正灌流の伝統的な指標であるSvO2を必要最低限な条件とし、加えて新たな指標としてDO2 iの目標値を300mL/min/m2以上とした体外循環管理が重要である。

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本体外循環技術医学会
前の記事
feedback
Top