2020 年 47 巻 1 号 p. 28-34
混合静脈血酸素飽和度(SvO2)による人工心肺管理は局所の酸素需給バランスの不均衡が反映されにくいことから適正灌流の指標として限界が指摘されている。今回、このSvO2の限界を酸素供給量(DO2)のモニタリングにより補えるかどうか術後急性腎障害(acute kidney injury:AKI)発症とSvO2およびDO2との関連を調査し、検討した。
体外循環中のSvO2とDO2iのカットオフ値から曲線下面積(AUC <SvO2 75、AUC <DO2 i300)、およびカットオフ値を下回った累積時間(Time <SvO2 75、Time <DO2 i300)を算出し比較検討を行った。
SvO2は両群で有意差を認めなかったが、AUC <DO2 i300とTime <DO2 i300に有意差を認めた。
両群でSvO2値は安全域とされる75%以上に概ね維持されていた。しかし、DO2 iはAKI群で有意に低く、SvO2を75%以上に維持するだけではAKIの予防とはならないことが示唆された。適正灌流の伝統的な指標であるSvO2を必要最低限な条件とし、加えて新たな指標としてDO2 iの目標値を300mL/min/m2以上とした体外循環管理が重要である。