抄録
Modified Ultrafiltration(以下,MUF)は,Elliottらが小児開心術において,血液濃縮,術後浮腫の軽減などを目的に開発した方法で,術後の呼吸循環動態に好影響を与える等の効果が報告されている。我々は,MUFを成人心大血管症例に応用し,その有用性を検討した。対象は1995年8月から1996年7月までに行われた,成人心大血管手術の内の30例に対してMUFを施行した。MUFは体外循環離脱直後にElliottらの方法に準じて行った。その結果,ヘマトクリット値(以下,Ht値)は平均23.9%から27.8%へ有意に上昇した。また,MUF前後でカテコラミン投与量,CVP,心拍数は変わらなかったが,収縮期血圧は平均101.5mmHgから114.0mmHgに,Cardiac Indexは平均4.15l/min/m2から4.83l/min/m2まで増加した。MUFは特別な回路を必要とせず,心肺残血を効率よく返血し,成人開心術においても短時間にHt値を上昇させた。また,術後の循環動態に好影響を与える可能性が示唆された。