抄録
シングルパス心筋保護用熱交換器6種類に対し,それぞれの熱交換能および熱交換器後方での回路内温度変化を比較検討した。25.0±1.0℃の灌流液を使用し,熱交換器水の温度は冷却時10℃,加熱時31℃に設定し,50~400ml/minの流量下で灌流実験を行った。熱交換率は各機種とも流量100~200ml/minで最高値を示した。各熱交換器の出口とSP回路先端部の温度較差は,各流量ともに灌流開始時に最高値を示し,平均最大温度較差は,50ml/min下では,冷却時12.8±2.3℃,加温時4.6±0.6℃で,流量200ml/minでは冷却時9.6±2.8℃,加温時3.8±1.7℃であった。また,最小温度較差に達するまでに要する時間は,流量50ml/min時150~170秒,流量200ml/min時60~80秒で,低流量時ほど長時間を要した。以上の結果より,シングルパス心筋保護熱交換器回路には熱交換器後方にかなりの回路内温度較差を認め,特に低流量時にはこの点十分な注意を要する。