抄録
【要旨】今回,低体温法を用いた体外循環症例より各体温時の酸素消費量の相関関係と回帰直線を求め,軽度低体温および常温体外循環時の至適灌流量を検討した。体外循環開始時の体温は34.5±1.1℃でこの時の酸素消費量は42.8±9.8ml/minであり,平均28.5℃の低体温時の酸素消費量は24.0±5.3ml/minであった。回帰直線はY=-65.806+3.171×Xであり,相関係数は0.773で相関が認められた。当院の灌流指数は2.2~2.4l/min/m2で低体温時には2.0~2.1l/min/m2に減量しているが,求められた回帰直線より,低体温にて酸素消費量の下がる割合と当院での灌流量の減量する割合とは1対0.2で,また静脈血の酸素飽和度がすべての症例で85%以上で経過したことから,28℃では2.0l/min/m2の灌流量を更に減量せしめる可能性が示唆された。34~35℃での体外循環時の灌流量は全身の酸素消費量が低下していることから,2.2~2.4l/min/m2の灌流指数が適当と考えられ,常温下でも回帰直線の結果より,灌流量を意図して増量する必要はないと考えられた。