抄録
(要旨)肝移植を行う際に,開腹術既往の有無により高度の腹腔内癒着があり,相当量の術中出血量が予想される症例や重度の門脈圧亢進症に対し,門脈圧の減圧を目的にVeno-venous Bypass(VVBP)を施行し減圧効果を検討した。1997年9月から2001年11月までに行った,生体肝移植62例と脳死肝移植2例を合わせた64例のうち,16例にVVBPを施行した。Bio pumpを用いたヘパリンコーティングの閉鎖回路を使用し,Research Medical社製のカニューレを脱血管として門脈本幹または下腸間膜静脈内と大伏在静脈より外腸骨静脈に留置し,腋窩静脈に送血した。VVBPは,心拍数,収縮期動脈血圧,中心静脈圧,心係数,肺動脈圧に影響を及ぼすことなく門脈圧を低下(p<0.0018)させることができた。VVBPは肝移植時の心拍出量と血圧を維持することができ,Portocaval shuntが困難な高度腹腔内癒着症例や,門脈圧亢進症に対して門脈圧を低減し安全に手術を行える可能性が示唆された。