体外循環技術
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29 巻, 2 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 宮之 下誠, 山内 尚也, 中尾 一俊, 向山 美果也, 佐藤 勲, 村井 則之, 今関 隆雄, 荒川 政美
    2002 年 29 巻 2 号 p. 105-107
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】新しいポリ2メトキシエチルアクリレート(PMEA)コーティングを施した人工肺:テルモ社製キャピオックスRXは,安価で生体適合性に優れていると言われている。今回我々は,キャピオックスRXとPMEAコーティング心肺回路のシステム(RX群:7例)と,当院で従来使用している人工心肺システム(C群:7例)を生体適合性について比較検討した。その結果,TAT,PIC,IL-6,血小板保存率において両群間に有意差を認めなかった。ブラジキニンは,全測定ポイントでC群が有意に低値を示した。血小板第4因子は,人工心肺開始1時間後と人工心肺ウィーニング時でC群が有意に低値を示した。
  • 百瀬 直樹, 後藤 悟, 山越 理恵, 又吉 盛博, 唐澤 あや子, 安藤 勝信, 中島 逸郎, 小林 浩二
    2002 年 29 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】人工心肺からの離脱が難しい症例に対しては,的確な心機能の評価が重要となる。我々は本来体外循環の安全管理のためにモニタされている混合静脈血酸素飽和度(SvO2)により,心機能が評価できると考えた。1,392例にSvO2をモニタした結果,離脱時に人工心肺より生体心臓への前負荷を増してもSvO2が上昇しない症例では,人工心肺からの離脱が難しく,更にSvO2の値が60%を越えられなかった19症例においては,離脱が困難で補助循環が必要であった。体外循環下でSvO2を左右している因子は,1.生体の酸素消費,2.血液の酸素運搬能力,3 .換気,4.体外循環流量,そして,5.心拍出量である。離脱時には1~3の因子が安定していると考えられ,4の体外循環流量は体外循環の技術者は把握できている。つまりこのような条件下では5の心拍出量とSvO2の変化が結び付けられる。結果からもSvO2の反応が悪い症例においては十分な心機能が得られず,離脱が難しいことが示されている。これらのことから離脱時における心機能を評価する上でSvO2の変化は良い指標となることが結論付けられる。
  • 黒光 弘 幸, 伊勢 英史, 渡邊 史宏, 夜久 均, 嶌田 泰之, 北村 信夫
    2002 年 29 巻 2 号 p. 112-115
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】当病院で2001年4月から5月までに行われた,待機成人開心術症例のうち,20例を無作為に選択し,PMEA Coating(X CoatingTM)CircuitとHeparin Coating Circuitを使用し,血小板数,顆粒球エラスターゼ,白血球数,ブラジキニンにおける両Coatingの生体適合性を比較検討した。両Coatingにおいて統計学的な有意差は見られなかった。このことから,PMEA CoatingはHeparin Cortingと同等の生体適合性を有すると示唆され,PMEA Coatingを用いることは,本邦における医療保険制度での医療材料費の軽減に繋がると考えられた。
  • 岩城 秀平, 山本 泰伸, 小山 美季, 横田 通夫, 坂本 喜三郎, 角三 和子, 西岡 雅彦, 藤本 欣史, 太田 教隆, 上原 京勲, ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年,新生児開心術の成績は,飛躍的に向上したが,左心低形成症候群(HLHS)に対してはいまだに満足が行くものではない。今回,HLHSに対する当院における体外循環法を報告する。Norwood型手術を10例に施行し,送血は腕頭動脈に3mmグラフトを吻合した。新大動脈の吻合途中から大動脈遮断を行い,腕頭動脈から上肢への血流を維持した。流量は0.4~0.8L/min/m2であった。平均の手術時体重2,824g,手術時間460分,体外循環時間250分,大動脈遮断時間77分,循環停止は5例で22分,選択的脳灌流時間44分,下行大動脈送血を4例に行った。手術成績は生存7例,早期死亡3例(30%)であった。同時期に行ったHLHS以外の新生児開心術34例中,生存31例,早期死亡3例(9%)であった。脳保護と心筋虚血時間短縮を目的に選択的脳灌流法を行った。左心低形成症候群に対するNorwood型手術は,その他の新生児開心術と比較すると成績は不良であり,手術手技の改良のみならず,体外循環補助手段の更なる進歩が必要と考える。
  • 木下 昌樹, 田中 佑佳, 宇井 雄一, 山本 英樹, 丸山 仁実, 林 哲也, 尾嶋 良恵, 新田 功児, 西分 和也, 和田 英喜, 保 ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】人工心肺を使用した開心術では,異物反応によって種々のサイトカインが放出され,この炎症反応により放出された物質が,術後の臓器障害に関与するとされている。この炎症反応により放出された物質について,人工心肺中にHFを行うことによるサイトカイン(IL-6,IL-10)除去の有無,更に,それによる術後の影響を検討した。CABG症例12例を対象としコントロール群(6例),HF施行群(6例)に分類した。IL-6は,コントロール群に比べHF群が有意に低値を示した。IL-10は,両群間に差は見られなかった。また,術後24時間の出血量とICU滞在時間が,コントロール群に比べHF群が有意に低値を示した。これらの結果から,炎症性サイトカインを除去することは炎症反応の抑制が期待でき,臓器障害の予防の可能性が示唆された。
  • ―HDとHFの比較―
    河田 修一, 山口 和也, 澤崎 史明, 堂野 隆史, 窪田 将司, 鷹橋 浩, 黒田 廣, 瀧上 剛, 大場 淳一, 青木 秀俊
    2002 年 29 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】人工心肺中に2種類の血液浄化を使用し,血液浄化法を比較検討した。対象は人工心肺中に血液浄化を併用した25例を対象とし,血液浄化の方法は血液透析群(HD群)12例,血液濾過群(HF群)13例であった。両群を比較した結果,電解質では終了時のNaでHD群が有意に高く人工心肺中の変動が少なかった。終了時のKではHD群が有意に低かった。低分子量物質の除去性能では終了時のBUNでHD群が有意に低かった。Crでは両群間に有意差を認めなかったが,除去性能はHD群が良好な結果となった。水分バランスはHD群+609mL,HF群+1,529mLとHD群が有意に少なく,水分バランスの面でもHD群が良好な結果となった。BEでは両群間に有意差は認められなかった。操作性でもHD群が簡便な手技にて施行可能であり,当院における人工心肺中の血液浄化法はHDが優れていると考えられた。
  • 黒光 弘幸, 伊勢 英志, 渡辺 史宏, 夜久 均, 蔦田 泰之, 岡 克彦, 吉村 茂晴, 石丸 靖二, 中川 宜明, 北村 信夫
    2002 年 29 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年,CPB中の血液浄化法が注目されているが,血液濾過方式の違いに関する報告は皆無である。そこで,2001年7月から9月までに行われた待機成人症例から10症例を無作為に選択し,血液濃縮器AQUASTREAM JH-110を用いて濾過方式の検討を行った。濾過方式は,濾液側の吸引により容易に高いTMPが得られる急速陰圧濾過方式と,血液流動抵抗で濾過する緩徐陽圧濾過方式の二種類とし,それぞれの濾過方式についてCPB中に増加する炎症性物質の除去能を比較した。その結果,今回検討した炎症性物質のうち,TNF-α およびIL-6については,濾過方式に拘らず除去効果が認められた。更にTNF-α に関しては,急速陰圧濾過方式が有用であった。TNF-α は前炎症性サイトカインであるため,急速陰圧濾過方式は炎症性物質除去とサイトカイン誘導抑制の双方に有用であると考えられた。
  • ― Xcoating,heparin coating,SS膜の比較―
    荒木 康幸, 坂上 正道, 笠野 靖代, 濱田 倫朗, 川野 洋眞, 三隅 寛恭, 下川 恭弘, 原 正彦, 上杉 英之, 原武 義和, 坂 ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    (要旨)今回我々は,Duraflo coatingのSPIRALGOLD(HC群),XcoatingのキャピオックスRX25(XC群),noncoating素材のMENOXAL-6000α(NC群)においてPMNelastase,血小板数,β-トロンボグロビン,フィブリノーゲン,ブラジキニンの項目にて比較検討した。すべての結果をヘマトクリット値にて補正を行い,統計処理はone-way-ANOVA,多重比較検定を用いp<0.05をもって有意差ありとした。なお回路,リザーバーはDuraflo II処理システムに統一した。また,各群1例の電子顕微鏡写真を撮影した。フィブリノーゲン減少率は有意にXC群で減少抑制が見られた(p<0.05)。血小板数減少率もXC群で有意に減少抑制を示した(p<0 .01)。ブラジキニンはXC群のみ体外循環10分後の値で,NC群比べ有意に上昇抑制が認められた(p<0 .01)。これらの結果から短時間の手術でもcoatingが必要と考えられた。そしてXC群が他の2群に比べ生体適合性に優れていることが示唆された。
  • 秋山 玲奈, 服部 良信, 石川 隆志, 山内 章弘, 海江田 章, 豊崎 正人, 三澤 健治, 榊原 未和, 石川 正敏, 伊藤 康宏, ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    体外循環におけるバイオメイト回路(東洋紡製)の有用性を,ノンコート回路(泉工医科製)と比較検討した。2000年5月から2001年9月に軽度低体温体外循環で施行した開心術症例のうちバイオメイト回路を用いた13例(B群)と,ノンコーティング回路を用いた10例(N群)を対象とした.C3c,C4,AT-III,トロンビンAT-III複合体,fibrinogen,Plasminogen,α2Plasmin inhibitor,plasmin inhibitor complex,IL-6,IL-10,フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)を麻酔導入後,体外循環開始後,復温開始時,体外循環終了時,硫酸プロタミン投与後60分で測定した。術後出血量を12時間後,24時間後で計測した。サイトカイン・血液凝固系については両群間に有意差はなかった。DEHPはB群が低い傾向にあったが,有意差はなかった。術後出血量はB群が低い傾向にあったが,有意差はなかった。今回の検討ではバイオメイト回路の有用性は認めなかった。
  • 二重 実, 吉田 秀人, 小林 靖雄, 橋本 武昌, 田崎 昭夫, 杉田 隆彰, 松山 克彦, 西澤 純一郎, 吉田 和則, 松尾 武彦, ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    MENOX AL-6000α,Capiox RX 25R,QUANTUM HF-6700,QUADROXの4種類の膜型人工肺のガス交換能を比較した。なお,血液ガス分析は成人開心術症例において完全体外循環中の人工肺入口と人工肺出口から採血し行った。酸素加能については,酸素添加量はQUANTUM HF-6700とMENOX AL-6000α が高値となったが,有効肺血流量率(Qp/Qt)では4種類の人工肺に差はなかった。炭酸ガス排出能については,Capiox RX25Rが炭酸ガス排出量および炭酸ガス較差分圧比(△CO2/PaCO2)が高値となった。しかしながら,PaO2とPaCO2は4種類の人工肺で差はなく,適正値を維持することができ,臨床使用上問題がないものと考えられる。
  • ― CARP法を用いた強制的高圧冠灌流によるスパズムの抑制―
    清末 智, 服部 敏之, 山鹿 章, 開 正宏, 小林 民男, 伊藤 敏明, 堀田 壽郎
    2002 年 29 巻 2 号 p. 146-148
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】今回,CABG施行後に著明なST上昇と血行動態の悪化を認めた体外循環(CPB)離脱困難症例に対し,Controlled aortic root perfusion(CARP)法を施行した。本来のCARP法は大動脈遮断解除直前に施行する心筋保護法の一つであるが,我々は大動脈を再遮断し心筋保護回路を用いて体循環血液を大動脈基部より注入した。CARP流量は,500mL/minで冠血管拡張剤を心筋保護回路側枝より注入して12分間施行した。CARP法によりSTの上昇を認めることなくCPBから離脱でき,その後もECG,血行動態ともに良好であった。CARP法は体循環とは別に冠灌流量,圧のコントロールが行え,注入した薬剤をすべて冠状動脈に灌流できる利点がある。今後当院では,CPB離脱困難時に施行する選択肢の一つに成り得ると考えられた。
  • 上田 彰, 広瀬 聡, 原 和信, 栗原 大典, 竹井 沙緒梨, 内田 直里
    2002 年 29 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】症例は,76歳,女性,維持透析患者であった。胸痛を主訴に当院に搬送され,胸部CTにて,StanfordA型急性解離が認められ,緊急大動脈上行グラフト置換術となった。術後,血行動態が不安定な時期の血液浄化回避を目的に,術中,人工心肺回路内の限外濾過と人工心肺復温中,人工透析を併用した。術後,血液浄化を24時間後に開始でき,第4病日には,通常の人工透析へ移行できた。維持透析患者の心,血管手術は,術前,術中,術後の血液浄化による管理により,尿毒素の除去,水分バランス,電解質の補正が必要であり,術後,血行動態の不安定な時期の血液浄化回避が重要であると考えられる。本症例では,人工心肺中,限外濾過と人工透析を併用することは有効であり,今後,心大血管緊急手術が必要とされる,維持透析患者の救命率向上を目標とするためには,最も適切な血液浄化法を検討し,選択する必要性があると考えられた。
  • 原 和信, 広瀬 聡, 上田 彰
    2002 年 29 巻 2 号 p. 153-155
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】症例は51歳男性。平成12年6月拡張型心筋症治療のため当院に入院。その後も心不全状態から脱せれず8月18日準緊急的にBatista+僧帽弁置換術を施行した。術後よりT.Bilが緩徐に上昇し,術後9日目には凝固能の低下と高ビリルビン血症を認めたため,4日間PE(plasma exchange)を施行したが術後16日目にはT.Bi1が再上昇し,乏尿となり全身浮腫が進行したためビリルビン除去と除水目的にCPE(continuos plasma exchange)とCHDF(continuos hemodiafiltration)を直列に接続し血液浄化を行った。血液浄化直後T.Bilは13.2mg/dLと減少し,12時間後14.9mg/dLまで上昇したが以後は減少した。尿量も6時間後より認め当日750mL,以後増加した。開心術後,腎不全を合併した高ビリルビン血症に対してCPE+CHDFを同時に施行することにより良好な結果を得た。
  • 山田 貴樹, 吉田 幸子, 貞弘 光章
    2002 年 29 巻 2 号 p. 156-158
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体重100kg以上の患者の体外循環を経験した。当院では体外循環を施行する際,灌流量は体表面積あたり2.5L/min/m2で送血しており,高流量になることから,送血・脱血カニューレは,通常よりワンサイズ大きいものを用いた結果,灌流量,灌流圧など人工心肺の経過には問題なかったが,通常のヘパリン投与量0.3mL/kgではACTの延長が不充分であった。肥満の患者は循環血液量が増加する特徴があり,全血液量に対してのヘパリン投与量が少なかったと考えられた。
  • 並河 孝次, 西端 純司, 佐山 友紀, 石川 敦, 宮下 誠, 宮崎 浩志
    2002 年 29 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】症例は52歳,男性,心窩部痛を主訴に他院にて救急入院となったが,ショック状態となったため,急性心筋梗塞疑いにて当院に救急転送。IABP補助下にて冠動脈造影を施行したが,有意狭窄は認められなかった。その後,腹部超音波,腹部CT検査にて褐色細胞腫が疑われ,これに伴うカテコラミン心筋症が考えられた。経皮的心肺補助システム(PCPS) ,IABP補助下にて比較的安定した血行動態を維持し腫瘍摘出術に成功した。術後,術前より認めていたDIC傾向による出血が持続したため,心機能の回復とともにPCPSから離脱した。その後,カニューレ挿入部下肢の感覚障害が残るものの自力歩行が可能となり,62日後軽快退院した。カテコラミン心筋症による心原性ショック症例に対し,PCPSが有用であった1例と考えられた。
  • 後藤 成利, 伊藤 嘉延, 安藤 俊昭, 中村 省三, 三浦 伸一, 加藤 真, 中島 義仁, 古川 哲也, 伊藤 さやか, 倉橋 正明
    2002 年 29 巻 2 号 p. 163-165
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】今回我々は,Fisher症候群に心筋炎を合併した症例に,PCPSを施行し救命し得た。免疫吸着療法を連日3日間施行,吸着施行後に発熱あり,解熱剤を使用した。呼吸窮迫,意識レベル低下・脈拍170回/min,血圧触診80mmHg,SpO281%にて人工呼吸器開始。ICUにて一時徐脈あったが改善。心臓カテーテル検査室にてPCPS,IABP挿入。冠動脈には明らかな狭窄なし。左室造影で左室壁運動の全周性の低下がありEFは17%であった。PCPSはキャビオックスEBSキットを使用し,ACTは200~250秒に保ち,バクスター社製VigilanceにてCCO,SvO2,Datex社製オスカーにてEtCO2の経時観察を行った。PCPS開始後,依然代謝性アシドーシスが強く,透析を4時間単回行い,PCPSの補助流量で2.5~3.0L/minで維持した。ICU入室4日目から自己心拍は上昇し,UCG上にて左室壁運動の改善が見られ,徐々にウイニングし,合計101時間6分でICU入室5日目に離脱した。
  • 広瀬 聡, 原 和信, 上田 彰, 栗原 大典, 竹井 沙緒梨, 加藤 雅也
    2002 年 29 巻 2 号 p. 166-167
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】急性心筋炎を発症し,低心拍出量症候群に加え,致死性不整脈を併発した49歳男性に対してPCPSによる補助循環を行った。PCPSはテルモ社製CAPIOX EBSヘパリンコーティング回路,抗凝固剤はヘパリンを使用した。PCPS導入後より尿量増加,3日目より血圧の上昇が見られた。4日目に熱交換器流入部に血栓が確認され,PCPS回路の交換を行った。その後,心エコー図上,徐々に心壁運動の改善が見られ,8日目にIABPから,10日目にPCPSから離脱し,第27病日に軽快退院となった。PCPSによる総補助循環時間は213時間だった。本症例は,PCPSによる循環補助が奏功し,臓器不全を回避でき離脱し得たものと考えられた。
  • 會田 治男, 樺澤 寛二, 関口 敦, 吉田 譲, 大木 康則, 佐藤 智明, 奥村 高広, 小塚 アユ子, 高橋 克弘, 斎藤 亮輔, 矢 ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 168-170
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】左主冠状動脈(#5-99%狭窄)の患者にLMTパッチ拡大手術を行い,術後の重症不整脈に対し,PCPSを行い救命し得た。体外循環は通常どおり,手術は上行大動脈を横切開,左冠動脈口に延長し,大伏在静脈にてパッチ拡大術を行った。体外循環離脱は容易だったが,閉胸操作中にST上昇,VTからvf状態を繰り返し,IABPでの補助下でもVT発作が繰り返されたためPCPSを施行した。PCPSでの補助後はVT,vfの重症不整脈は散発したのみで血行動態も安定し,ICU帰室となり,71時間後にはPCPSを離脱した。不整脈の発作要因に関して,血液ガスやバイパス流量など異常はなく,不整脈の発生状況からLMTパッチ拡大部が閉胸により圧迫閉塞し,不整脈が発生したのではないかと考えられた。PCPS下で心臓の容量負荷が軽減され,LMTパッチ拡大部の圧迫の改善が図られたと推測される。不整脈発生時には迅速に体外循環や補助循環へ対応可能なサポート体制も重要と考えられる。
  • ― PCPSからV-V ECLAへ―
    木村 啓志, 八木 克史, 寺内 茂, 寺内 規子, 福山 佐弥香, 上田 紘平, 神吉 豊, 伊東 正文, 川田 雅俊, 福井 道彦, 天 ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】突然の意識障害と痙攣重積状態でICU入院になった患者に対し,通常の抗痙攣薬投与では重積状態を抑制できず,バルビツレートの大量投与を余儀なくされた。その副作用か,突然の徐脈を来し,ペーシングにカテコラミン大量投与を併用したが血行動態は改善せず,IABPによる補助を行ったがこれにも反応せずPCPSに踏み切った。開始27時間後酸素加能低下により回路交換を行ったが,その後劇的に心機能が改善し72時間後離脱し得た。しかし,心機能改善とともに肺機能低下が顕著化,PCPS離脱と同時に静脈内体外循環肺補助法(Vero Venous Extra Corporeal Lung Assist:V-V ECLA)に移行した。人工呼吸器の設定はrest settingとし,Ht≧40%,SvO2≧80%,SaO2≧90%に維持すべく送血流量を調節し,72時間後離脱可能となった。現在,救急集中治療領域では,多くの機械的補助・治療法が登場してきている。病態に応じた方法を的確に判断し施行しなければ,より病態が悪化してしまう可能性が充分に考えられる。今回,PCPSのみでの肺補助も考慮したが,PCPSの副作用を考えV-V ECLAへの移行を決断し良好な結果を得た。今後,より安全・迅速・簡便な方法,器材を検討していかなければならないと考えられた。
  • 稲葉 昌道, 舩木 哲也, 木村 佳央, 仲野 孝, 岡田 保誠, 稲川 博司, 寺田 泰蔵, 北條 浩
    2002 年 29 巻 2 号 p. 175-176
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】経皮的心肺補助法(PCPS)は,各種の循環補助あるいは呼吸補助として多くの施設で用いられている。今回我々は,右房内の大量血栓症の患者に対し,PCPS下に血栓溶解療法を施行し,血栓を完全に消失せしめ救命し得た。右房内の大量の血栓溶解療法を施行するにあたり,溶解療法により血栓が微小となり肺動脈に飛散流入し,肺塞栓の再発が懸念された。本法では,その対策として,PCPS開始前にPCPS静脈カニューレより,開心術用ローラーポンプにて血栓の吸引を試みた。また,PCPS施行時に回路内への血栓混入も危惧されたため,脱血側回路に閉鎖式リザーバーを組み込むことにより血栓の混入を防止した。これらの対策を施行し,血栓溶解療法を安全に遂行することができた。
  • 河口 俊之, 浜岡 一幸
    2002 年 29 巻 2 号 p. 177-179
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年,OPCAB(拍動下冠状動脈バイパス手術)の症例が増加傾向にあり,これに伴い緊急時にCPBへ移行する症例も増えつつある。そのため,このような症例に対し,いかに早く回路を組立て対応できるかが重要である。今回我々は,緊急時に対応するため,回路組立て時間の短縮化,業務の効率化を目的としプレコネクト回路を採用した。従来の回路とプレコネクト回路を用いてセットアップ時間と省スペース化について比較検討した。その結果,プレコネクト回路で約20分の時間短縮が可能となった。また術者側回路のセッティング時間も平均3分短縮できた。省スペース化については箱数が3箱減少し,外寸も奥行9cm,幅2cm大きくなったが,高さが20cm減少した。プレコネクト回路の使用は回路組立て時間の短縮,業務の効率向上と省スペース化に繋がった。待機手術のみならず緊急手術時にも十分使用が可能であると考えられた。
  • ―熱交換器は必要か―
    北本 憲永, 神谷 典男, 西條 幸志, 高岡 伸次, 鈴木 克尚, 鈴木 智代, 高柳 綾子, 小出 昌秋, 野地 智, 打田 俊司, 石 ...
    2002 年 29 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】当院では,体外循環が比較的短時間で終了する手術では34℃前後の軽度低体温としている。このことから,熱交換を使用するのは多くの場合は加温時のみであった。そのため,熱交換器を使用しなくても体外循環中の体温コントロールが可能であると考えシステムを検討した。熱交換器を使用しない代わりに保温冷却マットを患者の下に敷くことと,特別に作製したマットを四肢に巻き,体表からと室温にて体温をコントロールした。熱交換器を使用しない場合でも人工心肺離脱時の体温は平均36.1℃にコントロールされ,特に問題となるような体温低下はなく良好な結果が得られた。熱交換器を使用したいシステムの充填量は,6.5kg以下のシステムで139mL(動脈フィルタ非使用時105mL),6.5~9kgで145mL,9~12kgで170mL,12~17kgで196mLとなり,無輸血体外循環の安全城が上昇し,更なる無輸血体外循環の適応体重低下の可能性が示唆された。
  • 太田 稔, 加藤 伸彦, 嶋村 剛, 陳 孟鳳, 長佐古 良英, 緒方 俊郎, 藤堂 省
    2002 年 29 巻 2 号 p. 184-186
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    (要旨)肝移植を行う際に,開腹術既往の有無により高度の腹腔内癒着があり,相当量の術中出血量が予想される症例や重度の門脈圧亢進症に対し,門脈圧の減圧を目的にVeno-venous Bypass(VVBP)を施行し減圧効果を検討した。1997年9月から2001年11月までに行った,生体肝移植62例と脳死肝移植2例を合わせた64例のうち,16例にVVBPを施行した。Bio pumpを用いたヘパリンコーティングの閉鎖回路を使用し,Research Medical社製のカニューレを脱血管として門脈本幹または下腸間膜静脈内と大伏在静脈より外腸骨静脈に留置し,腋窩静脈に送血した。VVBPは,心拍数,収縮期動脈血圧,中心静脈圧,心係数,肺動脈圧に影響を及ぼすことなく門脈圧を低下(p<0.0018)させることができた。VVBPは肝移植時の心拍出量と血圧を維持することができ,Portocaval shuntが困難な高度腹腔内癒着症例や,門脈圧亢進症に対して門脈圧を低減し安全に手術を行える可能性が示唆された。
  • 西山 登司雄, 糸川 珠美, 松本 恵子, 角野 令子, 近藤 千裕, 田上 佳奈, 笘篠 圭祐, 福岡 和秀
    2002 年 29 巻 2 号 p. 187-188
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】当院では,処理水および透析液のエンドトキシンの低減と,原水に対する処理水の回収率向上を目的にLong-lifeシステムを導入した。今回このシステムに用いられている内圧式中空糸膜モジュール(MLモジュール)の性能評価を行った。評価方法としてSDI,エンドトキシン,シリカ濃度をそれぞれMLモジュール前後で測定した。その結果,当院でのMLモジュールのエンドトキシン阻止率は97.6±1.25%であり,高い阻止能を有していた。SDI値においても微粒子濁度物質の除去が認められ,RO供給水のSDI上限値4より大幅に下げることができており,MLモジュール以降のRO,UFモジュールへのストレス軽減となっている。しかし,シリカに関しては除去能が認められなかった。高いシリカ濃度で回収率を上げるためには,原水温度を25~26℃ に保つ温度管理が必要である。これによって,当院では従来40%の回収率であったが57%までアップできるようになった。MLモジュールはRO,UFモジュールへのストレス軽減および清潔な透析液の安定供給に有用なシステムである。
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