【要旨】患者は67歳男性。経食道エコーにて肺動脈・右房内に動きがある大量の棍棒状の血栓を確認,急性肺梗塞にて体外循環下(血液温30℃,vf)で右房と肺動脈を切開し血栓を除去した。その後,換気再開時点より気道内から大量の出血が認められ,外科的止血に難渋し,出血に対し次第に輸液・輸血による容量補充が追いつかなくなり,灌流量低下状態(灌流指数1.1~1.9L/min/m2)が88分間続いた。その際,低体温にした代謝抑制効果よりも,常温による出血阻止効果に期待し温度管理を行った。出血による自己肺ガス交換能低下に対して,出血の軽減や全身への酸素供給を維持するために閉鎖回路のECMOに移行し,止血促進のために最小限の抗凝固(ACT150~200秒)で管理した。その結果,出血およびガス交換能が改善し,ECMOは45時間40分で離脱できた。