教育心理学研究
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原著
大学生における過去の被養護・養護体験が現在の養護性(nurturance)へ及ぼす影響
楜澤 令子福本 俊岩立 志津夫
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2009 年 57 巻 2 号 p. 168-179

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抄録
 本研究の目的は, 第1に養護性(nurturance以下養護性)尺度を作成し, 第2にその尺度を使って養護性の規定要因及び過去の体験からの影響を調査することである。予備研究で作成した養護性尺度には, 相手の健全な発達を育成する「共感性と技能」に関する項目が含まれ, この尺度は, 共感性(9項目), 技能(7項目), 準備性(4項目), 非受容性(5項目)の4下位尺度から構成されている。予備研究でこの尺度の信頼性, 妥当性を確認した後, 本研究(N=239)では養護性の規定要因(性別・きょうだいの地位), 養護性形成の原因となる過去の体験の影響を検討した。その結果は次の通りだった。(1)女子は男子より養護性が高い, (2)きょうだいの地位(長子・中間子・末子・一人っ子の違い)に関する分析から, 女子の場合長子の「技能」が他のきょうだいの地位より有意傾向で高い, (3)過去の体験の影響では, 女子が男子より過去の体験の影響を受け, さらにきょうだいの立場(兄・姉・弟・妹による違い)により, 影響をうける体験の種類が異なる。その他, きょうだい同士や教師との関わり, ペットの飼育体験も養護性に影響することが示唆された。
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© 2009 日本教育心理学会
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