教育心理学研究
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原著
  • 中井 大介
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 4 号 p. 263-275
    発行日: 2018/12/30
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,教師との関係の形成・維持に対する動機づけと,教師への援助要請場面における利益とコストの予期,および相談行動との関連を検討した。中学生288名を対象に質問紙調査を実施した。第一に,担任教師との関係の形成・維持に対する動機づけが担任教師に対する相談行動の利益・コストの予期を媒介し,担任教師に対する相談行動に及ぼす影響を性別に検討した。その結果,(a)「内的調整」「同一化」といった自律的動機づけが主に相談実行の利益の予期と正の関連,「取り入れ」「外的調整」といった統制的動機づけが主に相談実行のコストの予期と正の関連を示すこと,(b)その関連の様相は性別によって異なること,(c)主に自律的動機づけである「内的調整」が相談行動と正の関連,相談回避の利益の予期である「問題の抱え込み」が相談行動と負の関連を示すことが明らかになった。(d)また,動機づけで調査対象者を類型化した結果,すべての動機づけが高い「高動機型」は,他の類型に比べ相談実行の利益の予期が高い傾向にあるだけでなく,相談実行のコストの予期も高い傾向にある中で,より相談行動の得点が高いなど,類型によって援助要請の特徴が異なる可能性が示唆された。

  • 﨑田 亜紀穂, 髙坂 康雅
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 4 号 p. 276-286
    発行日: 2018/12/30
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,中学1年生において内的作業モデルが登校回避感情に及ぼす影響を明らかにし,学級機能の認知によってその影響がどのように変動するかを明らかにすることであった。東京都内の中学1年生295名を対象に質問紙調査を行った。その結果,内的作業モデルのうち,特に回避性が登校回避感情に正の影響を示していた。また,学級機能を低く認知している群では,両価性が登校嫌悪感に,回避性が登校回避感情全般に正の影響を示した。一方,学級機能が高い群,つまり民主的な学級運営が行われている群では,両価性から登校回避感情への影響は弱まるが,回避性から登校回避感情への影響の低減はみられなかった。これらから,学級機能を高めることは,両価性の高い生徒に対しては登校回避感情を抑制するように働くが,回避性の高い生徒の登校回避感情を低減することは困難であることが示唆された。

  • 外山 美樹, 湯 立, 長峯 聖人, 黒住 嶺, 三和 秀平, 相川 充
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 2018/12/30
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,学習性無力感パラダイムを用いて,実験参加者にストレスフルな失敗経験を与えた後の,制御焦点と課題パフォーマンスの関連を検討することであった。促進焦点と防止焦点で基本的な認知能力のパフォーマンスには差はないが,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点のパフォーマンスが優位になるという仮説を立てて検証を行った。実験参加者は大学生57名であった。本研究の結果より,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも,パフォーマンスが高いことが示され,仮説が支持された。また,解決可能な課題と解決不可能な課題が混在している課題においては,防止焦点のほうが促進焦点よりも,パフォーマンスが高い傾向にあることが明らかとなった。本研究より,文脈によって促進焦点と防止焦点のどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示された。促進焦点は,挫折や失敗から回復する“レジリエンス”が優れており,一方で,防止焦点は,解決不可能な課題が混在した文脈での課題パフォーマンスが優れていることが示唆された。

原著[実践研究]
  • 大沢 知隼, 橋本 塁, 嶋田 洋徳
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2018 年 66 巻 4 号 p. 300-312
    発行日: 2018/12/30
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,集団ソーシャルスキルトレーニング(集団SST)の効果を左右する個人差として報酬への感受性に着目し,スキルの遂行に随伴する報酬のひとつである笑顔刺激に対する注意バイアス修正訓練によって,ソーシャルスキルの維持と般化が促進されるかどうか検討することであった。小中学生を,標準的な集団SSTを行う標準群と,集団SSTに加えて注意バイアス修正訓練を行う注意訓練群に振り分けた。ターゲットスキルの獲得がなされなかった可能性のある者を除外し,報酬への感受性の高低群に分けて分析を行った結果,小中学生ともにすべての条件において,獲得されたターゲットスキルが介入1か月後まで維持および刺激般化されることが示された。また反応般化については,攻撃行動は小学生のすべての条件で低減した一方で,向社会的スキルは小中学生ともに注意訓練群においてのみ増加が見られた。このことから,たとえターゲットスキルが維持および刺激般化されたとしても,スキルの種類によっては反応般化が起こりにくいこと,そして反応般化が起こりにくいスキルであっても,注意バイアス修正訓練を併用することで相応の反応般化が促される可能性があることが示唆された。

  • 佐々木 掌子
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2018 年 66 巻 4 号 p. 313-326
    発行日: 2018/12/30
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,性的指向(sexual orientation)や性同一性(gender identity)をはじめとする性の諸要素の多様性を中学校の授業で教育することで,生徒の同性愛やトランスジェンダーに対する嫌悪(以下,嫌悪)が低下するのか否か対照群を設けたデザインで検討した。協力者は,授業実施群が公立中学の生徒397名,対照群が同地域同規模の公立中学の生徒328名である。その結果,交互作用(F(2, 1336)=4.77, p<.01)が有意であったため多重比較を行うと,授業実施群のみ,教科授業後及び道徳授業後に有意に嫌悪の減少が認められた。対照群には得点変化はなく,授業実施群は対照群よりも有意に嫌悪得点が低かった。なお,自尊感情と嫌悪とは無相関であり,どれだけ自尊心が高くなろうとも嫌悪は変わらないことが示唆された。また,男子においては,多様な他者の理解や対等な意識の向上が嫌悪の低減と関連していた。

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