教育心理学研究
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原著
  • 藤間 友里亜, 外山 美樹
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 99-115
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     場面緘黙経験者は,場面緘黙が改善した後にも不適応に陥ることがあると指摘されており,場面緘黙寛解後のアプローチも課題とされているが,これまで十分に研究されていない。場面緘黙寛解後の困難を軽減させるための研究も必要であると考えられる。本研究では,場面緘黙経験者の寛解後の具体的な困難や,現在の状態に至るまでのプロセスを明らかにすることを目的とし,場面緘黙経験者19名を対象に面接調査を行った。M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)により分析を行った結果,〈気質〉,〈緘黙時のネガティブな経験〉,〈寛解後不適応〉,〈不適応の改善〉,〈適応〉の5つのカテゴリー,合計21の概念から成るモデルが生成された。元々の気質と緘黙時のネガティブな経験が寛解後不適応につながっており,寛解後不適応は不適応の改善によって適応に至るというプロセスが見出された。概念として,『話す必要性を減らす』や『不安や緊張を軽減させる』,『発話能力を向上させる』など,不適応の改善に役立つ行動も見出された。本研究によって得られた知見は不適応状態に陥っている場面緘黙経験者にとって,不適応の改善のために有益な情報であると考えられる。

  • 直原 康光, 安藤 智子
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 116-134
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,親が認知する離婚後の父母コペアレンティング,ゲートキーピングを測定する尺度を作成し,信頼性・妥当性を検証すること,離婚後の父母コペアレンティング,ゲートキーピングと子どもの適応との関連を検討することであった。離婚後の父母コペアレンティング,ゲートキーピング尺度は,離婚後9年未満の親432名を対象に分析を行った結果,一定の信頼性・妥当性を備えており,同居親・別居親で測定不変性を有していることが確認された。作成した尺度を用いて,2―17歳の子どもと同居する母親166名を分析対象として仮説モデルを検証した結果,葛藤的なコペアレンティングは,SDQの「総合的困難さ」との間に直接正の関連が認められた。一方,協力的なコペアレンティングは,SDQとの間に直接の関連は認められなかったものの,面会交流の促進を介して,同居時の父親の子どもに対する暴力が高かった場合のみ,SDQの「総合的困難さ」との間に正の関連が認められた。以上の結果を踏まえ,離婚後の父母や親子関係の在り方,親に対する心理教育プログラム等への示唆について,考察した。

  • ―仮説的判断を阻害する要因としての自己完結的推論―
    佐藤 誠子, 工藤 与志文
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 135-148
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究は,既有知識の変化の困難さについて学習者の推論過程の側面から検討するものである。従来の合理的モデルに従えば,既有知識が変化するには,誤概念など既有知識からの「直観的判断」とルールに基づく「仮説的判断」とが同等におこなわれ,それらが比較対照される必要があるが,実際には後者の判断に困難があることが佐藤・工藤(2015)により示されている。これらを踏まえ,本研究では三角型四角形(三角形の直観的イメージに近い四角形)の分類課題を取り上げ,大学生を対象に仮説的判断の重要性とその方法を教授する授業をおこなうことで,課題に対する判断の転換がみられるかどうかを検討した。その結果,①推論の出発点を直観的判断にしか置けず,それを支えるための説明を生み出す方向にしか推論が展開されない「自己完結的推論」が存在すること(研究1,研究2),②仮説的判断を推論の俎上に載せることができれば,自己完結的推論が抑制され,双方を比較対照する検証過程に持ち込める可能性が高まること(研究2)が示された。これらの結果から,従来の誤概念修正ストラテジーの効果および概念変化達成のための教授学習条件を再考した。

  • ―日米の大学生を対象として―
    伊藤 健彦
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,集団間で不利な状況が自尊心に与える影響を日米の大学生を対象として明らかにすることである。先行研究では,不利な集団成員性が自尊心に与える影響が検討されてきた。しかし現在までの知見において,その影響がポジティブなものかネガティブなものか一貫した結果は得られていない。そこで本研究では,社会的な不平等を認知する傾向にある人々とそうではない人々で,不利な状況が自尊心に与える影響が異なるという仮説を立てて,日本人とアメリカ人の大学生を対象に実験を行った。結果として,アメリカ人の学生は日本人の学生よりも社会的な不平等を認知する傾向にあり,日本人の学生においては不利な状況が自尊心に影響を与えていなかったのに対し,アメリカ人の学生においては不利な状況が自尊心に負の影響を与えていた。この傾向は,実験参加者を,不平等認知が高い傾向にある人たちと低い傾向にある人たちに分けた場合でも同じであった。

  • 小野田 亮介
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 158-174
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,文章産出において書き手が想定する仮想の読み手に着目し,(1)読み手に合わせた文章産出が困難化する原因を解明し,(2)読み手に合わせた文章産出を促す方法について考案することである。研究1では,中学校2年生の1学級に対して,教示した読み手を説得するための文章産出課題を実施し,文章産出時に想定した仮想の読み手の特徴を報告するように求めた。その結果,読み手を教示したにもかかわらず,読み手を漠然と想定していたり,教示と異なる読み手を想定したりする生徒が認められ,具体的に読み手を想定したと報告する生徒であっても,読み手に合わせた文章を産出しない事例が認められた。そこで研究2では,中学校1年生の2学級を対象とし,読み手の想定を求める「対照条件」と,読み手を記述して固定する「可視化条件」との間で,仮想の読み手の特徴や文章の比較を行った。その結果,対照条件に比べ,可視化条件ではより具体的に読み手が想定されており,文章内の情報量や文章の説得力も増加していた。一方,読み手を可視化していても,文章産出前後で読み手の情報が精緻化されたり,質的に変化したりする読み手情報の変動性も認められた。

  • ―防止焦点に着目して―
    長峯 聖人, 外山 美樹
    原稿種別: 原著
    2021 年 69 巻 2 号 p. 175-186
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     近年では,制御焦点と具体的な他者との関連についての研究が増加している。その中で長峯他(2019)は,競争場面における他者に着目し,特性として促進焦点的な個人にとってはライバル関係が適応的な結果につながることを示した。本研究は長峯他(2019)の知見を踏まえ,競争場面において,特性として防止焦点的な個人にとってはチームメイトとの関係が適応的な結果につながるかどうかを検討した。加えて長峯他(2019)に倣い,制御焦点の差異がチームメイトとの関係による影響を介し,チームへのコミットメントおよび集団的な動機づけに影響するかどうかを併せて検討した。大学生アスリートを対象とした調査研究の結果,まず特性として防止焦点的な個人はチームメイトとの関係によって義務自己の顕在化が生じやすいことが示された。さらに防止焦点的な個人は促進焦点的な個人よりもチームへの規範的コミットメントおよび集団的な動機づけの程度が高いことが明らかになった。加えて,それらの関連は,義務自己の顕在化によって媒介されることが併せて示された。最後に,本研究で制御焦点との関連がみられなかった変数に関する考察が行われた後,課題と今後の展望について議論された。

原著[実践研究]
  • 廣澤 愛子, 大西 将史, 笹原 未来, 鈴木 静香, 織田 安沙美, 綾城 初穂, 松木 健一
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2021 年 69 巻 2 号 p. 187-203
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究は大学生(非専門家)による学校支援ボランティアに焦点を当て,児童生徒に肯定的な変化が見られた支援の特徴を捉えることを目的とした。特別な配慮を要する児童生徒に,小中学校(保健室や相談室を含む)や家庭において大学生が心理的支援や学習支援を行い,児童生徒に肯定的変化が見られた21例の活動最終報告書を,5名の分析者で質的に分析した。その結果,支援者の特徴として,(1)活動に意欲的に従事し,(2)対象児の状態を観取しながら,受容的な態度と積極的に活動を主導する態度の両方を使い分け,目的志向的というより自然体でいる,(3)活動中及び活動終了後に支援について省察しながら,(4)専門職とチームで支援するという4点が明らかとなった。また21事例は,4点すべてを満たすバランス良好型,チーム支援に欠ける子ども支援優位型,対象児との関わりに課題があるチーム支援優位型の3つに分類され,さらに同様の事例28例を追加して類型化を行った結果,すべての事例がいずれかに分類されることが確認された。これらの結果を踏まえ,支援の要になる支援者の態度・関わりや,支援者の専門性向上を促す大学の後方支援の在り方について考察した。

  • ―高校生のつまずきの実態と教師の認識に着目して―
    太田 絵梨子
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2021 年 69 巻 2 号 p. 204-220
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

     高校数学では,基礎的な概念の理解や数学的表現力の育成が重視されており,テストなどの学習評価でもそうした観点での診断が求められている。一方,概念的理解やその表現を問うテストとは具体的にどのようなものであり,そうしたテストの実施が教育現場の課題の解決にどのように資するかについては十分検討されていない。そこで本研究では,研究者が心理学的な視点を生かして行なった学習評価に関する提案を高校数学の実践場面で検討した。具体的には,(1)高校数学における概念的理解を評価するテストの考案,(2)テストを受験した高校生のつまずきの分析,(3)高校生による概念的理解の実態に対する教師の認識の検討,の3点を行なった。分析の結果,基礎的な概念の理解や数学的表現に課題が見られ,教師が生徒の理解の実態を必ずしも把握できているとは言えないことが明らかになった。また,結果を教師にフィードバックした際のグループディスカッションの様子から,教師が学習者の理解状況に対する認識を修正し,日常的な評価や授業でも概念的理解を問う必要性を感じていたことが示された。最後に,数学における学習評価の研究及び教育実践に対する示唆と展望について論じた。

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