教育心理学研究
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原著
神経性過食症患者が抱く食事を巡る問題—自己—対人関係の関連性
—M-GTAによる自己物語の分析—
竹田 剛
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2012 年 60 巻 3 号 p. 249-260

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抄録

 摂食障害患者の自尊感情は低い状態にあると多く指摘されており, 自尊感情の形成に影響を与えるとされる自己概念に関する研究が行われている。しかしそれらは量的指標によるものが多く, 生き生きと個人を理解するには自己物語を通した把握が必要であるといえる。そこで本研究では, 主に神経性過食症患者はどのように自己を捉えているのかというリサーチクエスチョンの下, 神経性過食症患者7名と特定不能の摂食障害患者1名を対象にしたインタビュー調査を行い, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて自己物語の分析を行った。その結果, 7つの仮説的知見を得て, それに基づいて神経性過食症患者の自己認識についての仮説モデルを作成した。神経性過食症患者は【「食」関連】【自己存在・他者存在】【関係性】の3領域に関する自己物語を有しており, 各領域において患者にとってネガティブであると考察できる展開をもっており, かつ各領域に含まれる自己物語は複雑に関係し合っていることが明らかとなった。各領域のもつネガティブな面, および自己物語の複雑性から抜け出すことが困難である点から患者の自尊感情は低い状態にあると考察された。

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© 2012 日本教育心理学会
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