教育心理学研究
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展望
注意欠陥/多動性障害児・者における原因帰属に関する研究動向
田中 真理
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2013 年 61 巻 2 号 p. 193-205

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抄録

 本研究は, 注意欠陥/多動性障害児・者(以下, AD/HD者)の自己認識について, 自分のパフォーマンスに影響を与えた要因をどのように自身がとらえているのかという原因帰属スタイルの様相に焦点をあてた研究動向について検討することを目的とした。原因帰属は自己統制感や効力感に関する自己認識のひとつの側面であり, 抑うつ状態などの二次障害への心理的支援において重要な知見を提供している。研究方法としては, 呈示された項目についてどのような原因帰属をするかを対象者自身が評定していく質問紙による調査と, 対象者がある課題を実際に遂行しそのパフォーマンスについて自分自身がどのような原因帰属をするかを評定する実験的調査とに分類された。原因帰属については統制性, 安定性, 特殊性, 内在性の複数の次元にわたり検討されており, 定型発達者との比較検討の結果, 児童・思春期のAD/HD者では, 失敗状況に対しては安定的・全体的および外在的原因帰属スタイルがみられ, 成人期では安定的・全体的・内在的な原因帰属スタイルがみられたことが共通して示された。最後に, AD/HD者にとっての適応的な原因帰属スタイルと学習性無力感との関連が議論された。

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© 2013 日本教育心理学会
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