抄録
本研究では, 就職活動開始以前の大学3年時点における特性的自己効力が大学3年時点の進路選択過程に対する自己効力に影響を与え, 大学3年時点の自己効力が進路選択行動および進路決定先への満足度に影響し, さらにそれによって大学4年時点の特性的自己効力が影響を受けるという一連の流れを想定したモデルを設定し, 妥当な因果モデルを考察することを目的とした。大学3年時点と4年時点の縦断的調査を行い, 翌年の就職が決定した大学4年生113名(男性57名, 女性56名)を対象として共分散構造分析を行った。その結果, 就職活動開始時点までに特性的自己効力が高い水準にあれば, 進路選択過程に対する自己効力も高く, 就職活動にも取り組みやすく, 志望も明確になりやすく, また進路決定先に対する満足度も高く, 特性的自己効力が高い状態で就職活動を終えられると示唆された。したがって, 就職活動を通した特性的自己効力の変容は可能であるものの, 就職活動開始時点における特性的自己効力の水準が就職活動を成功に導く一つの鍵になるといえる。