教育心理学研究
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原著
保護者との情動交流が小学生の無気力感に与える影響
―構造方程式モデルによる分析―
牧 郁子
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2019 年 67 巻 4 号 p. 223-235

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抄録

 本研究は小学生の無気力感を検討するため,中学生の無気力感研究・小学生の認知情動発達の観点から構成要因を同定し,構造方程式モデルにより小学生の無気力感を検証した。具体的には,子どもの感情表出の抑制が抑うつの要因である可能性が示されていること,児童期は発達的に,認知機能以上に情動機能に影響される可能性から,保護者への情動表出を新たに無気力感要因として同定した。そこで研究1で児童用・情動交流尺度(ポジティブ情動の送受信,ネガティブ情動の子ども送信,ネガティブ情動の保護者受信の3因子)を作成し,信頼性・妥当性を検証した。続いて研究2では,中学生における無気力感の構成要因として実証された変数に保護者との情動交流を加え,無気力感モデルを検証した。その結果,ポジティブ情動の送受信,ネガティブ情動の子ども送信,ネガティブ情動の保護者受信いずれも,子どものコーピング・エフィカシーを高め無気力感を低減する可能性が認められた。またネガティブ情動の保護者受信が子どもの思考の偏りを改善し,無気力感の低減につながる可能性も示唆された。

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© 2019 日本教育心理学会
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