教育心理学研究
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原著
一問一答形式での授業評価において学生が最重要視する知見の寡占度の計算
―ジップ分布を用いた分析―
豊田 秀樹中村 健太郎大橋 洸太郎秋山 隆
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2019 年 67 巻 4 号 p. 304-316

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抄録

 本研究では,大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。

 ここでの一問一答形式とは,全員がそれぞれ最初に1つ挙げる評価,印象に焦点を当て,これを知見と呼び,自由記述型授業評価データにおいて得られる主要な知見を得る方式を指している。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と併せて結果を示した。分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。

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© 2019 日本教育心理学会
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