教育心理学研究
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展望
犯罪者処遇の効果の向上に関する一考察
―犯罪者に対するマインドフルネス瞑想の可能性―
大江 由香杉浦 義典亀田 公子
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2020 年 68 巻 1 号 p. 94-107

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抄録

 犯罪者の中には,有効性が確認されている処遇を受けても,再犯に至る者が一定数おり,自己統制力や自己認識力に乏しく,指導を受け入れ,生かせないことが処遇効果を減じる要因になっている。本稿では,幅広い認知機能に関連し,自他に関する認識の変化につながると言われるマインドフルネス瞑想に注目して文献研究を行って,自己統制力や自己認識力を高めるための具体的な方法について検討した。マインドフルネス瞑想を,マインドワンダリングとの関わりという観点から,注意制御やアクセプタンス,呼吸法などが相互作用する3次元モデルとして整理すると,脳の中央実行ネットワークの機能が高まり,デフォルトモードネットワークの機能が適正化されることによって,自己統制力や自己認識力が向上するというメカニズムが明らかになった。マインドフルネス瞑想は,そのメカニズムを理解して実施することによって,自己統制力と自己認識力を高めるための指導の選択肢として,あるいは,従来の犯罪者指導の効果を増幅させる手段として,再犯の防止に寄与し得ると考えられた。

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© 2020 日本教育心理学会
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