教育心理学研究
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ハイプレッシャー状況が引き起こすワーキングメモリ課題成績低下に対する短期筆記開示の効果
則武 良英武井 祐子寺崎 正治門田 昌子竹内 いつ子湯澤 正通
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2020 年 68 巻 2 号 p. 134-146

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抄録

 本研究の目的は,ハイプレッシャー状況がワーキングメモリに及ぼす影響を明らかにすることと,ハイプレッシャー状況が引き起こす負の影響に対する短期筆記開示介入の効果を明らかにすることであった。研究1では,大学生を対象としてハイプレッシャー状況下でワーキングメモリ課題の遂行を求めた。研究1の結果から,ハイプレッシャー状況下ではワーキングメモリ課題成績が低下することが示された。研究2では,ハイプレッシャー状況でワーキングメモリ課題を遂行する直前に,参加者に短期筆記開示の実施を求めた。また,ネガティブな感情を扱う短期筆記開示に対して,研究2ではポジティブ感情を扱う短期利益筆記介入を開発し,2つの介入の効果を比較した。研究2の結果から,短期筆記開示はプレッシャーの負の影響を緩和して,ワーキングメモリ課題成績低下を一部緩和することが示唆された。特に,短期利益筆記は短期筆記開示と比較して,介入効果が安定することが示された。従来の短期筆記開示と比較して,本研究の短期利益筆記は子どもへの適用可能性が高いため,今後は教育現場における本介入の有効性を明らかにしていく必要があると考えられる。

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© 2020 日本教育心理学会
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